ヌール・トロンデラーグ県

ヌール・トロンデラーグ県 (Nord-Trøndelag)

ノルウェー中部、歴史的なトロンデラーグ地方の北部に位置していたヌール・トロンデラーグ県は、2018年まで独自の行政区画として存在した地域です。南隣のソール・トロンデラーグ県との統合により、現在は広大なトロンデラーグ県の一部を構成しています。この県は、変化に富む地形、豊かな自然、そして長い歴史を持つ地域として知られていました。

沿革

ヌール・トロンデラーグ県の行政区分としての始まりは、17世紀に遡ります。1662年に設立された旧トロニイェム県（現在のトロンハイムの旧称）が、後の分割の基礎となりました。1804年、この旧トロニイェム県は南北に分けられ、北側がヌール（北）トロニイェム県、南側がソール（南）トロニイェム県として分離独立します。行政区の名称は1919年に改称され、それぞれヌール・トロンデラーグ県、ソール・トロンデラーグ県となりました。長年の歴史を経て、両県の将来に関する議論が進み、2016年には住民投票が実施されました。その結果、両県で合併賛成が多数を占め、2018年1月1日に正式に統合され、単一のトロンデラーグ県として再出発しました。

地理と自然

ヌール・トロンデラーグ県の北はヌールラン県、東はスウェーデンのイェムトランド県、西は北海に面していました。県庁所在地はスタインシャー市で、2005年時点での人口は約2万5千人でした。県内には印象的な自然景観が点在しています。特に、Snåsavatnet湖は最大水深が482メートルにも達し、これはヨーロッパで二番目の深さにあたります。また、ナムセン川は、その豊富な漁獲量から「ヨーロッパで最も多くの鮭が獲れる川」として国際的に有名でした。ナムセン川以外にも、Verdalselva川やStjordalselva川なども、鮭漁が盛んなことでよく知られていました。

地形と産業

県の南部、トロンハイムフィヨルドの周辺地域、特にスチェールダル、フロスタ、レバンゲル、インデロイ、ヴァルダール、スタインシャーを含む東部エリアは、土壌が肥沃で農業に適しています。この地域では穀物や野菜の栽培が盛んで、ナムダレン低地の農地と合わせて、ノルウェー国内で最も北に位置する重要な耕作地帯を形成していました。内陸部に入ると、広大なトウヒの森林が広がり、スウェーデンとの国境地帯や北部の海岸沿いは山がちな地形となります。海岸近くには、ヨーロッパでも希少な針葉樹の温帯雨林も見られ、これらの豊かな自然環境は複数の国立公園として保護されていました。

人口と社会

人口の多くは、比較的生活しやすい環境であるトロンハイムフィヨルド沿いに集中していました。この地域は県の南部に位置し、いくつかの主要な都市が含まれていました。特にスチェールダルは、県内で最も人口増加率が高い自治体として注目されていました。

交通網

ヌール・トロンデラーグ県は、ノルウェー中部における交通の要所でもありました。主要な幹線道路としては、欧州自動車道路E6号線がスチェールダルからスタインシャーを経由して南北に県を縦断していました。また、トロンハイムから始まり、スチェールダルでE6号線から分岐してスウェーデンのスンツヴァルへと向かう欧州自動車道路E14号線が東西を結んでいました。このほか、スタインシャーからヌールラン県へと至る沿岸部の県道Fv17号線なども重要な路線でした。鉄道交通では、トロンハイムと北方のボードー（ヌールラン県）を結ぶヌールラン線が南北に貫通しており、さらにトロンハイムからスウェーデンのエステルスンドへ向かう国際鉄道路線も運行されていましたが、これらの路線は電化されていませんでした。空の玄関口としては、スチェールダルにノルウェーで4番目に利用者の多いトロンハイム空港があり、首都オスロへの便が1日25便以上運航されるほか、ロンドンなどへの国際便も利用可能でした。国内の小規模空港へのハブ機能も担っていました。

行政区分

ヌール・トロンデラーグ県は、合併により消滅するまで、合計24の基礎自治体（市）によって構成されていました。

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