ネタニア・ダヴラツ

ネタニア・ダヴラツ

ネタニア・ダヴラツ（Netania Davrath, 1931年8月12日 - 1987年4月11日）は、現代のウクライナにあたる地域で生を受けた著名なソプラノ歌手です。ポーランド領だったリウネの街でこの世に生を受けました。

生涯と音楽への道のり

幼少期に第二次世界大戦が勃発し、バルバロッサ作戦の戦火が迫ると、ダヴラツ一家は安全を求めバクーへと避難しました。戦後、故郷に戻ることなく、一家はポーランドを経由してイスラエルへと移住します。

音楽への情熱を抱いていたダヴラツは、1950年に奨学金を得てイェルサレム音楽院への入学を果たし、声楽をエディト・ボロシェクに師事しました。ここで基礎を固めた後、さらなる研鑽のためにイタリアへの留学も経験し、ヨーロッパの音楽文化に触れます。1956年にはテル・アヴィヴで公式なデビューを飾りました。しかし、学び続ける意欲は衰えず、1958年から翌年にかけてはアメリカ合衆国に渡り、名門ジュリアード音楽院でジェニー・トゥーレルのもとで研鑽を積んでいます。

国際的な活躍と共演

ジュリアードでの学びを終えた後、彼女のキャリアは国際的な広がりを見せ始めます。1960年から1961年にかけて、イスラエルのハイファ交響楽団や、世界的に名高いロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とのコンサートに出演し、その卓越した歌唱力で注目を集めました。この時期を境に、彼女の名声は確立され、世界の主要な舞台で歌う機会が増えました。

多くの著名な指揮者たちが彼女の才能を認め、共演を熱望しました。その中には、音楽史に名を残す巨匠たちが含まれています。レナード・バーンスタイン、ジョン・バルビローリ、レオポルド・ストコフスキー、モーリス・アブラヴァネルといった名指揮者たちとの協演は、彼女のキャリアにおける重要なハイライトとなりました。これらの共演を通じて、彼女の解釈や表現力はさらに洗練されていきました。

録音活動とその功績

ネタニア・ダヴラツは、アメリカのヴァンガード・レコード（Vanguard Records）に数多くの録音を残しました。これらの録音は、彼女の歌声とその幅広いレパートリーを知る上で非常に貴重です。

彼女の録音の中でも特に歴史的な重要性を持つのが、フランスの作曲家ジョゼフ・カントルーブによる歌曲集《オーヴェルニュの歌》の全曲録音です。この録音は、この人気のある歌曲集としては史上初の全曲録音として知られており、その後の演奏や録音に大きな影響を与えました。ダヴラツの透明感あふれるソプラノと、オーヴェルニュ地方の美しい旋律が見事に融合したこの録音は、現在でも多くの音楽愛好家から愛され続けています。

ダヴラツは1987年にその生涯を閉じましたが、彼女が残した録音、特に《オーヴェルニュの歌》は、今なお多くの人々に聴かれ、その芸術性を伝えています。戦禍に翻弄されながらも音楽の道を究め、国際的な成功を収めた彼女の人生と歌声は、多くの人々に感動を与え続けています。

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