ネッタイチョウ属

ネッタイチョウ属：熱帯の海を舞う白い鳥

ネッタイチョウ属は、鳥類ネッタイチョウ目ネッタイチョウ科に属する鳥類のグループです。現在、ネッタイチョウ科、そしてネッタイチョウ目においても唯一の属となっています。かつては、ペリカン目やコウノトリ目などに分類されることもありましたが、近年の分子系統解析に基づいた分類では、独立したネッタイチョウ目に位置づけられています。これは、キジカモ類の次に分岐した鳥類系統であるMetavesに属し、ペリカン目やコウノトリ目とは遠縁であることを示唆しています。ただし、Metavesと姉妹群であるCoronavesの単系統性については、まだ議論の余地があります。

広い海を翔ける姿

ネッタイチョウ属はインド洋、大西洋、太平洋の熱帯・亜熱帯の海域に広く分布しています。その英名“tropicbird”や和名からもわかるように、熱帯の海を代表する鳥と言えるでしょう。最大種であるアカハシネッタイチョウから最小種であるシラオネッタイチョウまで、全長は70～82cm、翼開張は90～95cmに達します。

最も目を引く特徴は、中央の尾羽が非常に長く伸びていることです。この長い尾羽は、オスの方がより長く発達しており、空中での優雅な動きをさらに際立たせます。全身は白い羽毛で覆われ、黒色の斑点が散らばる美しい姿をしています。翼は長く、海面を滑空するのに適した形状です。頑丈な嘴はわずかに下向きに湾曲し、縁には獲物を逃さないための鋸状の突起があります。水かきのある短い足は、陸での歩行には不向きで、地上では直立できずに体を後ろに傾けるような姿勢になります。

海上生活と繁殖

ネッタイチョウは、繁殖期以外はほとんど陸に上がらず、海上生活を送ります。海面に浮かぶ際には、長い尾羽を高く掲げる様子が観察されます。食性は動物食で、魚類や軟体動物を主な餌としています。空中でホバリングし、獲物を探す独特の狩りのスタイルも特徴的です。獲物を見つけると、上空から急降下して潜水し、巧みに捕らえます。

繁殖は卵生で、ペアは一生連れ添い、同じ場所に産卵を繰り返します。集団繁殖地（コロニー）を形成し、限られた産卵場所をめぐって激しい争いが起こることもあります。断崖の窪みや茂み、樹上などに巣を作ることはなく、地面や岩棚などに直接1個の卵を産みます。孵化直後の雛は綿羽に覆われており、幼鳥は成鳥に比べて斑紋が多く、尾羽が長く伸びていません。

ネッタイチョウ属の種類

現在、ネッタイチョウ属には以下の3種が知られています。

アカハシネッタイチョウ ( Phaethon aethereus): 赤い嘴が特徴です。
*シラオネッタイチョウ ( Phaethon lepturus): 白い尾羽が特徴です。
*アカオネッタイチョウ ( Phaethon rubricauda): 赤い尾羽が特徴です。

人間との関わりと保全

属名 Phaethon* は、ギリシャ神話の太陽神ヘリオスの息子パエトンに由来します。パエトンは太陽の戦車を操縦中に墜落したという神話がありますが、ネッタイチョウの飛翔する姿が、太陽の戦車を連想させたのでしょう。

近年、ネッタイチョウの生息数は、食用の狩猟や、人為的に移入された外来種による繁殖地の破壊などによって減少傾向にあります。これらの脅威に対処し、この美しい海鳥の未来を守るための保全活動が重要となっています。

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