ネブラ・ディスク

ネブラ天文盤：3600年前の宇宙へのまなざし

1999年、ドイツのザクセン＝アンハルト州ネブラ近郊で発見されたネブラ天文盤は、直径約32cm、重さ約2kgの青銅製の円盤です。表面には、金で太陽（または満月）、三日[[月]]、そして32個の星（プレアデス星団を含む）が象嵌されています。2005年、ドイツの研究チームはこの円盤を、約3600年前の初期青銅器時代に作られた世界最古の天文盤と結論づけました。

天文盤の謎：太陰[[暦]]と太陽暦の融合

ネブラ天文盤は、単なる天体の図像ではなく、高度な天文知識を反映した天文時計であると考えられています。円盤の金色の弧は、太陽の動きを捉え、春分・秋分、夏至、冬至の位置を示している可能性があります。特に、夏至の日の夕日は、この地点から見るとハルツ山脈最高峰ブロッケン山に隠れるため、天文観測に用いられていたという説が有力です。

さらに、この天文盤は太陰[[暦]]と太陽暦を組み合わせている可能性が指摘されています。太陰[[暦]]は月の満ち欠けに基づく暦で、太陽暦よりも約11日短い354日です。ネブラ天文盤は、太陰[[暦]]における閏月（13ヶ月目）の時期を予測し、太陰[[暦]]と季節を同期させるために使われていた可能性が高いと考えられています。これは、当時の高度な天文知識と、暦の精密な運用を物語っています。

また、プレアデス星団の配置は、農業暦との関連を示唆しています。プレアデス星団の出現・沈没は、種まきや収穫の時期を知らせる指標として、世界各地で利用されていました。ネブラ天文盤におけるプレアデス星団の配置は、中央ドイツの緯度で、3月の三日[[月]]と10月の満月の間に西の空に見える配置と一致し、農耕社会における暦としての役割も担っていたと考えられています。

発見から研究へ：波乱万丈の歴史

ネブラ天文盤は違法発掘によって発見され、その後、骨董業者などを経て、最終的に州立ハレ先史博物館に収蔵されました。発見時の状況や、その後を巡る経緯も、この天文盤の価値を高めています。発見場所付近にはビジターセンターが設置され、レプリカも展示されています。2013年にはユネスコ記憶遺産に登録され、その歴史的・文化的価値が国際的に認められました。

天文盤の製作：高度な金属加工技術

ネブラ天文盤は、高度な金属加工技術によって作られています。金のインレーは、青銅の表面に深い溝を刻み、金片を打ち込んで固定する手法で行われています。この技術は初期青銅器時代の中央ヨーロッパでは非常に稀であり、東部地中海からの技術伝播を示唆しています。しかし、具体的な製作方法は不明な点も多く、今後の研究が待たれます。

ネブラ天文盤が語るもの：社会構造と信仰

ネブラ天文盤は、初期青銅器時代の裕福な王侯の墳墓と関連しており、当時の社会の階層構造や、宗教・信仰と密接な繋がりを示しています。天文盤の埋葬は、儀式的な行為であったと考えられ、当時の社会構造、宗教観、宇宙観を理解するための重要な手がかりを提供しています。

金属分析：イギリスとの交易

2011年の分析により、ネブラ天文盤に使われた金はイギリス南西部コーンウォール地方の産出であることが判明しました。これは、初期青銅器時代にイギリスと中央ヨーロッパの間で盛んに行われていた交易を裏付ける重要な証拠です。

ネブラ天文盤：未来への問い

ネブラ天文盤は、発見から現在に至るまで、多くの謎を秘めながら、私たちに古代の人々の高度な知識と技術、そして宇宙観を伝えています。今後の研究によって、さらに多くのことが明らかになり、この3600年前の遺物が持つ意味をより深く理解することが期待されます。

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