太陰暦

太陰暦の概要

太陰暦（たいいんれき）は、月の満ち欠けに基づいて構成された暦のことを指します。この暦法では、月の新月から次の新月までの周期を「朔望月（さくぼうげつ）」といい、1朔望月を1ヶ月と数えます。ここで言う「太陰」という言葉は月を意味し、陰暦（いんれき）とも呼ばれています。太陰暦は、一般的には太陽暦（陽暦）に対する対義語として使われます。

太陰暦の分類

太陰暦には、閏月（うるうづき）を挿入して季節のずれを調整する「太陰太陽暦」と、季節調整を行わない「純粋太陰暦」が存在します。たとえば、日本や中国のような東アジアでは、太陰暦と言った場合、通常は太陰太陽暦を指しますが、イスラム圏では純粋太陰暦を採用しています。本稿では、特に純粋太陰暦に焦点を当て、主にヒジュラ暦（イスラム暦）に関して詳述します。

太陰太陽暦との関連

月は地球を公転しており、その周期は大体一定です。2015年時点での平均朔望月は約29.53日とされます。これにより、太陰暦では1朔望月を1月とし、12ヶ月を1年とします。こうして計算すると、1年は約354.37日となりますが、これには約11日の誤差が生じます。このため、周期的に小の月の中の日数を1日多くすること（355日とすること）が必要です。ヒジュラ暦では、30年間の中で約11回の閏年が設けられ、この調整を行います。

一方、太陰年は太陽年（約365.24日）よりも短いため、年を経るごとに季節とのずれが生じます。純粋太陰暦ではこのズレを補正せず、同じ日付でも毎年季節が異なり、約33年で元の季節に戻ると言われています。

太陰暦と季節の関係

1太陰年の354.37日は365.24日よりも約11日短いです。このため、太陰暦に従うと特定の月日の季節が年によって大きく変わります。大まかなサイクルで見れば、約8年で約88日、すなわち1季節の移動が見られ、33年で完全に1周することになります。例えば、北半球において、ヒジュラ暦1428年のラマダーン（9月頃）は2008年の初秋に重なりますが、ヒジュラ暦1410年のラマダーンは1990年の中春と被ります。このように長期にわたる視点で見ると、太陰暦と季節の関係は明らかに独立しています。しかし、短期的には昨年と今年のラマダーンは似た季節になることが多いです。

太陰暦のこうした季節の変動を補うため、閏月を設置して秩序を保ったものが「太陰太陽暦」であり、閏月を持たないものが「純粋太陰暦」と呼ばれることもあります。太陰太陽暦は、月の満ち欠けと季節とを整合させることに一定の成果を上げています。

太陰暦の実用例

ヒジュラ暦は、かつてイスラム世界で広く使用されていた暦ですが、現代では宗教行事以外では太陽暦を好む傾向があります。しかし、太陰暦は特に漁業などの分野で実用的です。潮の満ち引きが漁業に及ぼす影響を受け、潮汐に基づく作業計画が重要視されています。現在では、太陰暦をもとにした潮汐表が使われる一方で、漁師にとっては太陰暦を用いた満潮や干潮の時刻を理解することが基本的な技能とされています。

結論

このように、太陰暦は単なる時を区切るための道具ではなく、自然との密接な関連性を持ちながら、歴史的にも重要な役割を果たしています。月の周期を基に季節の変化を理解するための重要な概念として、太陰暦の知識は今なお有用です。

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