ネメシス (小説)

ネメシス (Nemesis)

アイザック・アシモフによって1989年に発表されたSF小説です。

概要

物語は、太陽系の近傍で発見された赤色矮星ネメシスを中心に展開します。太陽系を脱出し、ネメシス星系へと移住した植民衛星ローターと、それを追跡するために超光速航法「ハイパースペース・トラベル」の開発に挑む地球。この二つの舞台で物語が進行していきます。

この作品は、アシモフが執筆当時進めていたファウンデーションシリーズやロボットシリーズには属さない独立した作品です。しかし、両シリーズにおいて重要な要素であるハイパースペース・トラベルの開発が物語の軸となっており、『ファウンデーションの誕生』で本作のエピソードが言及されるなど、関連性は深いものとなっています。

短編集『ゴールド-黄金』に収録されたエッセイ「アイデア」では、本作のプロットがどのようにして生まれたのか、その過程が紹介されています。

あらすじ

23世紀、人類は過密状態の地球に住む80億の人々と、太陽系内に建設された複数の植民衛星（スペースコロニー）に住む数億の人々に分かれていました。そのうちの一つ、植民衛星ローターは、極秘裏に光速航行技術「ハイパー・アシスト駆動」を実用化し、深宇宙探査ロケットを送り出します。ローターの天文学者であるユージニアは、そのデータを基に、地球からわずか2光年の距離に位置しながらもオールトの雲に隠されていた赤色矮星を発見し、「ネメシス」と名付けました。

やがて、指導者ピット長官の下、ローターはハイパー・アシスト駆動を用いて太陽系を離脱し、2年の歳月をかけてネメシス星系に到達、巨大惑星メガスを周回する衛星エリスロの軌道に乗ります。ユージニアは、ネメシスが将来的に太陽系に及ぼすであろう脅威を発見しますが、地球や他の植民衛星からの干渉を嫌うピットは、地球への警告を禁じます。

一方、地球でも、ユージニアの元夫である情報局員クライルの示唆によって、ネメシスの存在とその脅威が明らかになります。ネメシスとローターを調査するため、情報局長であり事実上地球の支配者であるタナヤマと、その後継者コロパツキィの指揮の下、物理学者テッサを中心に、真の超光速航法「ハイパースペース・トラベル」の研究が進められます。12年の歳月を経て、ついに初の超光速宇宙船「スーパールミナル」が完成し、テッサとクライルを含む5人のクルーを乗せてネメシス探索へと出発します。

その頃、エリスロでは、ユージニアとクライルの娘であり、人並み外れた知性と直感能力を持つ少女マルレイネが、エリスロを支配する謎の知的生命体との接触を試みていました。

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