ファウンデーションシリーズ

アイザック・アシモフによるSF小説シリーズ『ファウンデーション』は、銀河帝国の興亡を壮大なスケールで描いた作品です。アシモフの代表作の一つであり、「ロボットシリーズ」と並び称されます。

概要

物語は、1万2千年続いた銀河帝国の衰退後、第二銀河帝国の核となるべく設立された第一ファウンデーションを中心に展開されます。銀河系の辺境に追放された銀河百科辞典編纂者の集団が、帝国の衰退とともに混乱を深める銀河系で、様々な危機を乗り越えながら覇者へと成長していく様子を描いています。

シリーズは全7作からなり、初期の3部作は特に人気を博しました。後に、ロボットシリーズや他のアシモフ作品との融合が図られ、アシモフの未来史としてまとめ上げられました。

物語の基本は、危機に立ち向かう人々のドラマです。辺境の集団が、知恵と勇気を駆使して危機を克服し、銀河系全体に勢力を拡大していく過程が描かれます。戦争も描かれますが、戦闘の描写は少なく、政治や社会の動き、それに伴う人間の活動が中心です。また、ミステリー要素も含まれており、読者を飽きさせません。

特徴的なのは、超小型原子力を用いた文明が、原子力利用の衰退とともに衰退していくという設定です。原子力は銀河文明成立の中核として描かれていますが、その危険性にも言及されています。

各話の冒頭や末尾には、銀河百科辞典からの引用が挿入されており、物語に深みを与えています。シリーズ全体を通して、ファウンデーション設立から約500年後までの歴史が描かれています。

受賞歴

3部作は1966年にヒューゴー賞のベストオールタイムシリーズ部門を受賞。第4巻『ファウンデーションの彼方へ』も1983年のヒューゴー賞長編小説部門を受賞しています。また、第2巻の中編「ザ・ミュール」は、1946年分のレトロヒューゴー賞を受賞しました。

新銀河帝国興亡史

アシモフの死後、3人のSF作家によって『新銀河帝国興亡史』3部作が刊行され、アシモフの作り上げた世界観がさらに深化しました。旧作の矛盾点や設定上の不備も解消されています。

作品リスト

ファウンデーション (1951年)
ファウンデーション対帝国 (1952年)
第二ファウンデーション (1953年)
ファウンデーションの彼方へ (1982年)
ファウンデーションと地球 (1986年)
ファウンデーションへの序曲 (1988年)
ファウンデーションの誕生 (1993年)

作中の時系列は、6 → 7 → 1 → 2 → 3 → 4 → 5 の順になります。

前史として以下の3作があり、「トランターもの」と呼ばれています。

宇宙の小石
暗黒星雲の彼方に
宇宙気流

『新銀河帝国興亡史』は以下の通りです。

ファウンデーションの危機（グレゴリイ・ベンフォード）
ファウンデーションと混沌（グレッグ・ベア）
ファウンデーションの勝利（デイヴィッド・ブリン）

あらすじ

1万2千年の歴史を持つ銀河帝国は、緩やかに崩壊へと向かっています。心理歴史学者のハリ・セルダンは、帝国の崩壊と暗黒時代の到来を予測し、暗黒時代の短縮と第二帝国の建設のため、二つの「ファウンデーション」を設立します。

銀河系の最果ての惑星ターミナスに置かれた第一ファウンデーションは、人類の知識の避難所としての役割を果たします。やがて周辺惑星を支配下に置き、帝国の攻撃を退けますが、内部では民主政治体制の崩壊が生じます。

ターミナスを陥落させたのは、ミュータントの「ミュール」でした。精神に干渉する能力を持つ彼の前には、心理歴史学も科学技術も無力でした。ミュールは第二ファウンデーションの所在地を捜索しますが、その指導者に敗れ、無害化されます。

創立500年後、ターミナスは銀河系の半分を支配下に収めますが、第二ファウンデーションの存在を疑い、探索に乗り出した議員トレヴィズは、銀河系の未来を左右する重大な決断を迫られます。

物語は時代を遡り、セルダンの生涯と、地球放棄と銀河帝国成立の真相、そして人類の庇護者であるロボットとの関わりが描かれていきます。

物語の背景

物語の舞台は数万年後の未来。人類は銀河系全体に進出し、数多くの惑星に居住しています。銀河帝国によって統治されていますが、科学技術の進歩は停滞しており、原子力文明から化石燃料の時代に逆行している地域もあります。

主要なキーワード

銀河帝国: 銀河系全体を統治する国家。惑星トランターを中心に1万2千年間存続。
心理歴史学: 膨大な数の人間集団の行動を予測する数学的手法。
銀河百科辞典: 科学技術や歴史などの知識を集大成したもの。知識の散逸を防ぎ、第二銀河帝国の発足に役立てる目的で編纂。
第一ファウンデーション: 銀河百科辞典の編纂を目的とする百科辞典財団。惑星ターミナスに追放され、高度な科学技術力を維持。
第二ファウンデーション: セルダンによって設立されたもう一つのファウンデーション。心理歴史学者を中心とする組織で、精神感応能力を持つ人間で構成。
ハリ・セルダン: 天才的な数学者。心理歴史学を発表し、ファウンデーションを創設。
セルダン計画: 新たな銀河帝国を創り出すための計画。その全容は第二ファウンデーションの構成員しか知らない。
セルダン危機: 心理歴史学によって予測された、ファウンデーションを襲う危機。
ザ・ミュール: 他者の精神を操作する能力を持つミュータント。第一ファウンデーションを危機に陥れる。
トランター: 銀河帝国の首都惑星。金属ドームに覆われた巨大都市。
ターミナス: 第一ファウンデーションの所在地。資源に乏しい辺境の惑星。
ガイア: 全ての生物・非生物が意識を共有する惑星。銀河系全体に拡大した「ギャラクシア」の建設を目指す。
ロボット: 帝国やファウンデーションの成立に深く関わっていたことが明らかにされる。

シリーズ出版の歴史

シリーズは、アシモフが第二次世界大戦中に着想を得て執筆を開始しました。当初は短編として発表され、後に単行本化されました。1950年代半ばには執筆が中断されましたが、1982年に続編が発表され、再び注目を集めました。

アシモフの死後には、『新銀河帝国興亡史』が刊行され、シリーズの世界観がさらに広がりました。

映像化

長年映像化の企画が持ち上がり、幾度かの頓挫を経て、2021年9月よりApple TV+でテレビドラマシリーズが配信されています。

まとめ

『ファウンデーションシリーズ』は、壮大なスケールと緻密な設定、そして魅力的なキャラクターたちが織りなす、SF史に残る傑作です。ぜひ一度、その世界に触れてみてください。

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