ノサ・セニョーラ・ダ・グラサ号事件

ノサ・セニョーラ・ダ・グラサ号事件の詳細

ノサ・セニョーラ・ダ・グラサ号事件は、1610年に長崎で発生した、ポルトガル貿易船の爆沈事件です。別名、マードレ・デ・デウス号事件とも呼ばれます。

事件の背景

事件の背景には、慶長13年（1608年）に有馬晴信が派遣した朱印船の船員が、マカオで騒動を起こしたことがありました。この騒動を鎮圧したアンドレ・ペソアは、翌年日本へ向かいます。長崎奉行の長谷川藤広は、事件が貿易に影響することを恐れ、ペソアに直接駿府へ赴くことを控えるよう説得しました。しかし、ポルトガル商人たちは、家康による商品の先買権や藤広の貿易への介入に不満を募らせ、ペソアの駿府行きを求めました。また、藤広自身も、従来の慣行を破る行為を繰り返したため、ポルトガル商人の反感を買っていました。

戦闘の勃発

晴信は、マカオでの事件に対する報復を企て、ペソアの捕縛と商船の捕獲を家康に願い出ました。当初、家康は貿易への影響を懸念しましたが、スペインやオランダとの関係から、晴信の願いを許可しました。ペソアは危険を感じ、出港準備を始めましたが、慶長14年（1609年）12月12日、晴信は藤広の支援のもと、兵船と兵を動員し、ダ・グラサ号を包囲しました。日本側は、マカオでの事件の責任は船長にあると考え、使者を派遣して船長の処罰を要求しましたが、交渉は決裂。12月15日、日本側は武装船でダ・グラサ号を攻撃しました。戦闘の末、船内で火災が発生し、ペソアは火薬庫に火を放ち、船を爆破させました。

事件の影響

この事件により、ポルトガル船の長崎来航は2年間中断されました。また、家康の信任が厚かった通詞のジョアン・ロドリゲスがマカオに追放され、幕府はポルトガル商人との仲介者を失いました。その後、マカオ市は貿易再開のため、使節を派遣し、幕府との交渉を行いました。その結果、ポルトガルとの貿易は再開されました。

事件後

晴信は、ダ・グラサ号撃沈の功績による旧領回復を試みましたが、実現しませんでした。また、伽羅木の購入を巡り、藤広との関係が悪化し、岡本大八事件へと繋がっていきます。

ノサ・セニョーラ・ダ・グラサ号事件は、当時の日本とポルトガル間の複雑な関係を示す出来事であり、貿易、宗教、権力闘争が絡み合った歴史の一幕として、後世に語り継がれています。

貿易摩擦と報復感情
徳川家康の外交戦略
キリスト教の影響
日本とポルトガルの関係

これらの要素が複雑に絡み合い、事件の背景を形成しています。

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