ノッチバック

ノッチバック車の解説：セダンの基本形とその特徴

ノッチバックとは、自動車のボディ形状の一つです。セダンやクーペなどに見られる、水平基調のルーフラインと比較的角度の立ったリアウィンドウが特徴的な形状で、キャビン（室内）とトランク（ラゲッジスペース）が明確に区別されているのが大きな特徴です。

この形状は、まるで背中に切り欠き（ノッチ）があるかのような外観から名付けられました。フォーマルで落ち着いた印象を与えるため、高級車やビジネスシーンで使われる車種に多く採用されています。

ノッチバックとその他のボディ形状との違い

ノッチバックは、リアウィンドウの角度やトランクの大きさなど、明確な基準はありませんが、他のボディ形状とはいくつかの点で区別できます。

ファストバック: リアウィンドウの角度が寝ており、ルーフからリアエンドまでなだらかな曲線を描く形状です。スポーティな印象を与えます。
カムバック: ルーフラインが下がりきる前に垂直に近い角度で切り落とされた尾部形状で、独特の個性的なデザインです。
ハッチバック: トランクとキャビンが一体となった形状で、リアゲート（バックドア）を開けて荷室にアクセスします。実用性を重視したデザインです。

ノッチバック車のメリット

ノッチバック車は、いくつかのメリットがあります。

高い車体剛性: ハッチバックに比べて車体剛性が高く、走行安定性に優れています。
優れた空力性能と静粛性: 空力性能に優れ、走行時の風切り音やロードノイズが少ないため、静かな車内空間を確保できます。
高い安全性: 後方からの追突事故において、乗員への衝撃を軽減する効果が期待できます。
荷室の臭気対策: トランクとキャビンが完全に区切られているため、荷物の臭いが車内に侵入しにくいです。
効率的な空調システム: キャビンとトランクが独立しているため、空調システムの効率が向上し、快適な温度管理が可能です。
ステータス性: 高級車やビジネスシーンで多く採用されるため、ステータス性を高める効果があります。
防犯性: 北米や中国では、荷室の中を覗き見られたり、テールゲートを破壊されて車内に侵入されたりするリスクを低減する効果も期待できます。

ノッチバック車のデメリット

一方、ノッチバック車にはデメリットもあります。

狭い荷室開口部: トランクへのアクセスが狭く、大きな荷物や出し入れが難しい物を取り扱うのが不便です。
後部座席からの荷室アクセス不可: 後部座席から直接荷室にアクセスできないため、荷物の出し入れが不便です。
荷室の温度調節不可: エアコンやヒーターによる荷室の温度調節ができないため、夏場や冬場は荷物が傷む可能性があります。
全長が長い: 特にリアオーバーハングが長いため、取り回しがしにくい場合があります。
トランクスルーの有無: トランクスルー機構の有無によって積載容量が大きく異なるため、購入前に確認が必要です。

ノッチバック車の歴史と現状

日本では、かつてハッチバックは商用車のようなイメージが強く、人気がありませんでした。しかし、近年はステーションワゴン、ミニバン、SUVの人気が高まり、積載能力に優れたハッチバック機構を持つ乗用車が広く受け入れられるようになりました。現在では、需要面でノッチバックを完全に凌駕しています。

しかし、高級車市場では、依然としてノッチバックセダンが主流です。これは、広いトランク容量の需要に加え、ステータス性、走行性能、キャビンの快適性といった要素が評価されているためと考えられます。また、タクシーや教習車、パトロールカーなど業務用セダンでも、ノッチバックが圧倒的に多く使われています。

近年では、コンパクトスポーツカーを除き、かつて欧州車に見られた3ドアハッチバッククーペも少なくなっています。また、リアオーバーハングが非常に短いセミノッチバックもほとんど見られなくなりました。

代表的なノッチバック車

数多くのセダン、クーペでノッチバックデザインが採用されてきました。ここでは、いくつかの代表的な車種を挙げます（スペースの都合上、全てを網羅できません）。

トヨタ：コロナ、クラウン、セリカ、カローラ、セプター、86、ソアラ、レクサスRCなど
日産：レパード、スカイライン、フェアレディZ、シルビア、GT-Rなど
ホンダ：プレリュード、アコード、シビックなど
マツダ：RX-7、コスモ、ロードスターなど
三菱：ギャラン、ランサーエボリューションなど
* スバル：インプレッサ、BRZなど

これ以外にも、多くのメーカーがノッチバックデザインの車種を製造してきました。それぞれの車種でデザインや機能が異なるため、購入を検討する際には、自分のニーズに合った車種を選ぶことが重要です。

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