ノベル (企業)

Novell社：栄光と挫折の軌跡

Novell社は、かつてネットワークソフトウェア業界を席巻した企業として知られていました。ユタ州を拠点に、革新的な技術と大胆な戦略で成長を遂げた一方で、市場環境の変化や経営判断の誤りにより、その歴史は栄光と挫折の両面を併せ持つものとなりました。本稿では、Novell社の歩みを詳細にたどり、その興亡の要因を分析します。

草創期：LAN時代の幕開け

1979年、Novell Data Systems Inc. (NDSI) として創業。当初はCP/M|CP_Mベースのシステムを製造するハードウェアメーカーでしたが、マイクロコンピュータ単体では競争が困難と判断。複数のマイクロコンピュータを連携させるネットワークソフトウェアの開発に着手します。この判断が、後にLAN（ローカルエリアネットワーク）時代の到来を加速させる重要な転換点となりました。

NDSIは、政府機関からの研究開発プロジェクトへの参加経験を持つ人材を擁しており、ARPANET関連技術への深い理解が、ネットワークソフトウェア開発の基礎となりました。資金調達には苦労しましたが、投資家からの支援を受け、ソフトウェア会社への転身を成功させます。

1983年、社名をNovell, Inc. に変更し、レイ・ノーダがCEOに就任。同年に発表されたNetWareは、マルチプラットフォーム対応のネットワークオペレーティングシステム（NOS）として市場を席巻し、Novell社の黄金時代を切り開きます。

NetWareの成功と多角化戦略

NetWareは、独自のプロトコルであるIPX/SPXを採用し、高い性能と安定性を誇りました。また、Novellは安価なイーサネットカードを原価で販売する戦略により、市場シェアの拡大を加速させます。1990年代初頭には、ビジネス用NOS市場においてほぼ独占的な地位を築きます。

NetWareの成功を基盤に、Novell社は事業を多角化しようと試みます。UNIXシステム、WordPerfectなどのオフィススイート、そしてeDirectoryなどのディレクトリサービスといった、幅広い製品や技術を獲得しました。しかし、これらの買収は必ずしも成功したとは言えず、むしろ経営資源の分散につながった側面もありました。

インターネット時代への対応と衰退

1990年代後半には、インターネットの普及により、ネットワーク技術の標準化が進み、IPプロトコルの重要性が増大します。Novell社は、IPXへの依存からの脱却、TCP/IPへの対応を進めますが、市場の変化に対応しきれませんでした。

Windowsの普及、そしてマイクロソフトとの競争激化は、Novell社の衰退を加速させます。Windowsがネットワーク機能を標準搭載するようになると、サードパーティー製のNOSへの需要は減少し、Novell社の市場シェアは急落します。アップグレード戦略の変更や、リセラーとの関係悪化なども、業績悪化に拍車をかけました。

Linuxへの転換とAttachmateによる買収

市場での苦戦を打開すべく、Novell社はLinuxに活路を見出そうとします。オープンソースLinuxディストリビューションであるSUSEの買収は、その象徴的な出来事でした。しかし、Linux市場での競争も激しく、Novell社の巻き返しは限定的なものにとどまります。

2011年、Attachmate Groupに買収され、Novell社は歴史の幕を閉じます。その後、マイクロフォーカスに買収され、現在は同社の一部門として存続しています。

教訓：市場の変化への対応と経営判断の重要性

Novell社の歴史は、市場環境の変化への対応、そして経営判断の重要性を示す良い事例です。技術的な優位性と市場の先見性を持ちながら、戦略の転換や経営陣の交代に伴う混乱、マイクロソフトとの競争激化など、数々の困難に直面し、最終的には買収という形で終焉を迎えています。Novell社の経験は、今日のIT企業にとっても、貴重な教訓となるでしょう。

主要製品

NetWare: Novell社の基幹製品であったネットワークオペレーティングシステム。
eDirectory: ディレクトリサービス。
GroupWise: グループウェア。
SUSE Linux Enterprise Server: Linuxディストリビューション。
* その他: Novellは、様々な周辺製品やサービスも提供していました。

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