ノルウェーの経済

ノルウェーの経済：豊かな福祉国家と資源大国の狭間

ノルウェーは、一人当たり名目GDPが世界トップクラスの高水準を誇る豊かな国です。2008年の名目GDPは約4518億USDと世界20位前後と決して小さくはありませんが、人口が少ないため、一人当たりの数値が非常に高くなっています。第二次世界大戦後、北欧諸国の中でも特に社会福祉政策に力を入れてきた結果、充実した福祉制度を持つ社会福祉国家として知られています。しかし、その経済基盤は、石油・天然ガスなどの天然資源に大きく依存しているという側面も持ち合わせています。

歴史：ヴァイキングから福祉国家へ

ノルウェーの歴史は、ヴァイキング時代の繁栄から始まります。イングランドとの交易で繁栄を極めた時代もありましたが、14世紀半ばのペストの大流行による人口激減や、ハンザ同盟への経済的依存など、困難な時代も経験しています。1397年のカルマル同盟締結によりデンマークの支配下に置かれましたが、1814年のキール条約を経てスウェーデンの支配下に入り、独自の憲法を制定することで高度な自治権を獲得しました。

19世紀には産業革命がノルウェーにも到来し、水産業や林業、海運業が発展しました。イギリスからの投資により、繊維工場や製材工場が近代化し、水産業でも新たな技術が導入されて漁獲高が向上しました。この時代、ノルウェーは世界有数の海運国となりました。しかし、工業化による都市への人口集中や、過剰労働力の発生などの問題も顕在化していきました。1905年にはスウェーデンから独立し、その後、第一次世界大戦や世界恐慌といった世界的な経済危機を経験しつつも、社会福祉政策を拡大し、国民国家としての基盤を固めていきました。

1960年代以降は、北海油田の開発により、石油・天然ガスが経済の主要産業となりました。これにより、ノルウェーは急成長を遂げ、経常収支黒字国となりました。しかし、石油収入への依存が高まったことで、他の産業の育成が課題となり、将来的な資源枯渇への備えも必要となっています。

産業構造：石油・天然ガスと多様な産業

ノルウェーのGDP構成比は、第三次産業が約60%と最も高く、次いで第二次産業が約40%、第一次産業は約1%となっています。

第一次産業

高緯度地帯という地理的条件から、農業は酪農が中心であり、穀物生産は限られています。一方、ノルウェー海流の影響で豊富な水産資源に恵まれ、水産業は重要な産業となっています。サケ養殖も盛んで、海外への輸出も主要な産業となっています。また、ノルウェーは古くから捕鯨を行っており、現在も商業捕鯨を続けています。

第二次産業

水力発電が豊富であることから、アルミニウム生産が盛んで、世界有数の生産国となっています。また、伝統的に強い造船業も、オフショア油田開発のための掘削リグや石油プラットフォームなどの生産に特化することで競争力を維持しています。そして、何よりも重要なのが石油・天然ガス産業です。北海油田からの石油・天然ガスの輸出は、ノルウェー経済の基幹産業となっています。

第三次産業

第三次産業は、金融業、観光業、海運業、公共サービスなどが中心となっています。ノルウェー政府は、国内最大手の金融機関であるDnB NORの株式を保有するなど、経済に深く関与しています。海運業も古くから盛んで、現在でも世界有数の商船隊を保有しています。

財政と社会福祉：充実した社会保障制度

ノルウェーは、充実した社会保障制度を備えた福祉国家です。国民皆保険制度や老齢年金制度など、手厚い社会福祉政策が展開されています。これらの財源は、所得税、消費税、社会保険料、石油収入などから賄われています。中央政府は、社会保障、教育、医療などの分野に大きな予算を計上しています。地方政府も、教育や社会福祉に重点を置いて歳出を行っていますが、中央政府からの財政移転に大きく依存している状況です。

貿易：資源輸出と貿易黒字

ノルウェーは、石油・天然ガス、水産物、金属製品などを中心に輸出を行い、機械類、化学製品、工業原料などを中心に輸入を行っています。北海油田の開発以降、石油・天然ガスの輸出が大きく増加し、貿易収支は黒字となっています。EU加盟には反対しており、独自の経済政策を展開しています。

結論：持続可能な発展に向けた課題

ノルウェーは、高い生活水準と充実した社会福祉制度を誇る豊かな国です。しかし、資源への依存度が高いことから、資源枯渇への備えや、資源以外の産業の育成、国際競争力の強化が重要な課題となっています。持続可能な発展のためには、経済構造の多様化と、環境保護への配慮が不可欠です。

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