ノルマントン号事件

ノルマントン号事件について

概要

ノルマントン号事件は、1886年10月24日に、紀州沖でイギリスの貨物船「ノルマントン」が座礁沈没したことが発端となった事件です。この事故では、日本人乗客25名が船内に取り残されて溺死した一方で、船長を含む乗組員は全員が救命ボートで脱出し、近くの漁村に救助されました。この不平等な状況に対して、日本国内では強い反発の声が上がりました。

沈没事故の経過

ノルマントン号は、横浜から神戸に向かう途中、暴風雨に見舞われ、三重県四日市沖から和歌山県樫野崎沖までの海域で座礁しました。沈没の際、乗客だった日本人25名は誰一人として避難を果たせず、結果的に全員が命を落としました。このことを受け、日本の当時の内閣は事実調査を命じました。

国民の反発

船長ドレーク以下の乗組員による日本人乗客への非人道的な対応が非難され、時の新聞『東京日日新聞』は、乗客が助けられなかった理由について人種差別的な疑念を呈しました。結局、この事件は国民の不満を増幅させ、日本政府に対して不平等条約の解消を求める動きが広がりました。

海難審判の結果

11月1日、神戸で行われた海難審判において、ドレーク船長は「日本人は英語が理解できなかったためにボートに乗ることができなかった」として無罪判決を受けました。この判決に対し、日本国民は激怒しました。再度の告訴が行われたものの、意見の食い違いが多く、最終的にはあまり実効性を持たない結論に至ります。

刑事裁判とその後

再度の告訴により、日本側はドレークを殺人罪で告訴しましたが、彼に下された判決は禁固3ヶ月で、賠償金の支払いはありませんでした。遺族が訴訟を取り下げた背景には、国際関係の悪化を恐れた者たちの圧力がありました。これにより、国民の間での対外的な意見も二分され、さらなる議論を呼ぶ結果となりました。

事件の影響

ノルマントン号事件は、日本国内における領事裁判権の問題を顕在化させ、後に不平等条約改正の声を高めました。この動きは、当時の大同団結運動と呼ばれる国民運動が盛んに取り上げ、外交政策の見直しへとつながりました。

社会的反響

さらに、事件に対する義援金が集まったことから、社会運動の一環として水難救助に尽力する「大日本帝国水難救済会」が設立されるなど、国の災害救助体制が意識されるようになりました。また、この出来事を題材とした演劇や歌なども生まれ、人々の間で強い記憶を留めたことが特徴的です。

結論

ノルマントン号事件は、日本近代史における重要な事件の一つであり、国民の人権意識の向上や外交政策の変革に影響を与えました。この事件を通じて、日本は自身の権利を守るための力を蓄え、将来の国際関係にも大きな影響を及ぼしました。

もう一度検索