ノース・ブリティッシュ・ロコモティブ

ノース・ブリティッシュ・ロコモティブ：ヨーロッパ最大の機関車メーカーとその栄枯盛衰

ノース・ブリティッシュ・ロコモティブ（NBL）は、スコットランド、グラスゴーを拠点とした機関車製造会社として、1903年にシャープ・スチュアート、ニールソン、ダブスの3社が合併して誕生しました。設立当初からヨーロッパ最大の機関車メーカーとしてその名を馳せ、世界各国に蒸気機関車を供給しました。

主要工場はグラスゴーのアトラス近辺とスプリングバーンに位置し、特にハイドパーク工場はNBLの中核を担っていました。1909年には、ハイドパーク工場の向かいに新本社と設計事務所が建設され、現在はノース・グラスゴー大学のキャンパスとなっています。第一次世界大戦中には、連合軍の戦車「マークVIII」の試作も手掛けましたが、終戦により量産には至りませんでした。なお、グラスゴー近郊には、カレドニアン鉄道のセント・ロロックス鉄道工場、ノース・ブリティッシュ鉄道のカウレア鉄道工場など、他の主要な鉄道工場も存在していました。

蒸気機関車製造における成功

NBLは、イギリス国内だけでなく、オーストラリア、マレーシア、ニュージーランドといった英連邦諸国にも蒸気機関車を輸出しました。特に、ニューサウスウェールズ州やビクトリア州には多数の機関車が供給され、ビクトリア州への供給は1951年まで続きました。

1939年には、ニュージーランド鉄道向けに40両のJクラス蒸気機関車を製造。その後、一部は石油燃焼式に改造され、JBクラスやJAクラスとして活躍しました。1951年にはさらに16両のJAクラスが製造されましたが、こちらはJクラスとは異なるデザインでした。合併前の3社を含めると、NBLはニュージーランド鉄道の蒸気機関車の約4分の1を供給した計算になります。

南アフリカ向けにも多くの機関車を輸出しており、1949年には100両以上の2-8-4車軸配置の機関車（24型）を納入。これらの機関車の一部は、2000年までジョージ・クニスナ線で観光列車として運行されました。さらに、1953年から1955年には4-8-4車軸配置の25型機関車を納入し、南アフリカにおける蒸気機関車の商業運行終了となる1992年まで使用されました。NBLは1924年にはフェアリー式機関車も製造していました。

ディーゼル機関車製造への挑戦と失敗

蒸気機関車製造で成功を収めたNBLでしたが、ディーゼル機関車への転換は失敗に終わりました。1950年代にドイツのMAN社とライセンス契約を結び、ディーゼル機関車の製造を開始しましたが、イギリス国鉄に納入されたクラス21、22、41、43、251など多くの機関車は、信頼性に欠けるものでした。

主な問題点は、材料の欠陥や製造上の不備による故障の多発、有毒排気ガスの問題などでした。特にクラス43では、エキゾーストマニホールドの鉄の材質が悪く、頻繁に故障が発生。ターボチャージャーの駆動ガス圧力が低下し、出力不足に陥るなど深刻な問題を抱えていました。イギリス国鉄は、多くの機関車を修理のため返却し、さらに3ヶ月の追加保証を求めるなど、NBLのディーゼル機関車は大きな問題を抱えていました。

電気機関車製造と破産

1960年代前半には、ウェスト・コースト本線の電化計画に伴い、25kV交流電気機関車の製造にも関わりました。ゼネラル・エレクトリック社と協力して製造されたクラス84（E3036～E3045）は、1960年から1961年にかけて運用を開始しましたが、これもディーゼル機関車同様、信頼性の低さから短期間で運用から外れることになります。

ディーゼル・電気機関車の製造における赤字と、保証期間中の設計変更要求、技術的な欠陥により、NBLは1962年4月19日に破産しました。

保存状況

現在、NBL製の機関車の一部が保存されています。本線用ディーゼル・電気機関車としては、クラス84の84001号機のみが残存しています。ニュージーランドでは、ニュージーランド鉄道のJ、JA、JBクラスの機関車が保存されており、オーストラリアでも多くの機関車が保存されています。その他、イギリスやウェールズなどでも、NBL製の機関車が保存され、その歴史を後世に伝えています。

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