シャープ・スチュアート

シャープ・スチュアート：イギリスを代表する機関車メーカーの興亡

シャープ・スチュアート社は、19世紀のイギリスにおいて、名高い機関車製造メーカーとしてその名を馳せました。その歴史は、1828年、トーマス・シャープとリチャード・ロバーツがマンチェスターに設立したシャープ・ロバーツ・アンド・カンパニーに始まります。当初は織物機械や機械工具の製造が中心でしたが、まもなく蒸気機関車の製造へと事業を拡大していきます。

初期の機関車開発と技術革新

初期のシャープ・ロバーツ社は、数台の定置式蒸気機関を製造した後、1833年、リバプール・アンド・マンチェスター鉄道向けに初の蒸気機関車「エクスペリメント」を完成させました。この機関車は、先輪上に垂直にシリンダーを搭載するなど、当時としては革新的な設計が特徴でした。その後、ダブリン・アンド・キングスタウン鉄道向けに同様の機関車を製造しますが、高速走行時の脱線問題に直面します。

この課題を克服するため、シャープ・ロバーツ社は、水平シリンダーを採用し、車軸配置を改良した新型機関車を開発しました。この改良型機関車は、1837年から1857年にかけて約600両製造され、グランド・ジャンクション鉄道に納入された10両は「シャーピーズ」と呼ばれ、高い評価を獲得しました。

シャープ・ブラザーズからシャープ・スチュアートへ

1843年、リチャード・ロバーツが会社を離れ、社名はシャープ・ブラザーズとなります。その後、ロンドン・アンド・ノース・ウェスタン鉄道向けに、エドワード・マッコネル設計の機関車「ブルーマーズ」を製造するなど、技術開発を継続します。

1852年、創設者であるジョン・シャープの引退に伴い、チャールズ・パトリック・スチュアートが経営を引き継ぎ、社名をシャープ・スチュアート・アンド・カンパニーに変更しました。この頃から、アンリ・ジファール発明のインジェクターの特許を取得するなど、積極的に技術革新に取り組んでいます。1864年には、有限責任会社となりました。

多様な機関車製造と事業拡大

シャープ・スチュアート社は、ファーネス鉄道向けに0-4-0型のテンダー[[機関車]]を大量生産する一方、グレート・インディアン・ペニンシュラ鉄道向けには4-6-0型サドルタンク[[機関車]]、さらにインド向けには0-8-0型機関車などを製造するなど、多様なニーズに対応した機関車を製造しました。

事業拡大に伴い、1888年にはグラスゴーのクライド機関車工場を買収、移転を行い、生産能力を向上させました。その後も、アルゼンチン・セントラル鉄道向けに複式機関車を製造したり、ミッドランド鉄道から大量発注を受けたりするなど、国内外で高い評価を得ていました。

特に、1894年に初めてイギリス国内向けにハイランド鉄道に納入した「ジョーンズ・グッズ」は、シャープ・スチュアート社の技術力の高さを示す象徴的な存在となりました。

合併と日本の鉄道への貢献

1903年までに5000両以上の機関車を製造したシャープ・スチュアート社は、同年、ニールソン社、ダブス社と合併してノース・ブリティッシュ・ロコモティブ社となりました。

シャープ・スチュアート社は、日本の鉄道黎明期にも大きな貢献を果たしています。1872年の日本最初の鉄道開業時に導入された機関車10両のうち4両を供給し、その高い性能は日本の鉄道発展に大きく貢献しました。さらに、阪神間鉄道や官営釜石鉄道の開業時にも機関車を供給しており、日本の近代化に重要な役割を果たしました。

シャープ・スチュアート社は、数多くの革新的な機関車を開発し、世界中の鉄道の発展に貢献した名門メーカーでした。その歴史は、技術革新の重要性と、企業の進取の精神を示す、貴重な事例と言えるでしょう。

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