ニールソン

ニールソン：スコットランドの蒸気機関車製造メーカーの興亡

ニールソン・アンド・カンパニー（Neilson and Company）は、19世紀のスコットランド、グラスゴーで栄えた名門機関車メーカーです。日本では「ネルソン」と呼ばれることも多く、舶用・定置式蒸気機関から始まり、数々の革新的な機関車を製造することで知られています。

草創期と発展

1836年、ウォルター・ニールソンとジェームス・ミッチェルによってグラスゴーに設立されました。当初は舶用・定置式蒸気機関の製造を手がけ、その後1843年から鉄道機関車の製造を開始。1855年には舶用・定置式蒸気機関の製造から撤退し、機関車製造に特化しました。社名は設立当初から幾度か変更され、最終的にニールソン・アンド・カンパニーに落ち着きました。

この期間、後に著名な機関車技師となるヘンリー・ダブスやパトリック・スターリングらがニールソン社で経験を積んでいます。初期には2軸タンク機関車や、車軸配置2-4-0、0-4-2のテンダー機関車を製造。これらの機関車はイギリス国内だけでなく、インドなど海外にも輸出されました。

事業拡大に伴い、1861年にはスプリングバーンに新工場を建設。しかし、1864年にはヘンリー・ダブスが独立してダブス社を設立、多くの熟練工を連れて去るという出来事もありました。それでもニールソン社は、ジェームス・レイドといった優秀な人材を迎え入れ、事業を継続しました。

多様な機関車と技術革新

1870年代には、車軸配置0-4-4のタンク機関車をロンドン・チャタム・アンド・ドーバー鉄道、ミッドランド鉄道、グレート・イースタン鉄道などに納入。その他にも様々な形式の機関車を国内外に供給し、インドには50両もの0-4-2機関車を輸出するなど、その生産規模は拡大を続けました。1872年にはニールソン社初の4軸機関車をインド向けに製造しています。

1879年には、イギリスで初めて車軸配置2-6-0の機関車をグレート・イースタン鉄道向けに製造しました。この機関車の1両は「モーガル」と命名され、この車軸配置の機関車の名称として広く定着しました。南アフリカや南アメリカへの機関車輸出も活発に行われ、ニールソン社の国際的な地位は確固たるものとなっていきました。

合併と終焉

1884年にはウォルター・ニールソンが会社を離れ、ジェームス・レイドが会社を継承。1898年には社名をニールソン・レイド・アンド・カンパニーに変更しました。しかし、アメリカからの激しい競争に直面し、経営は次第に厳しくなっていきました。

そして1903年、ニールソン・レイド社はダブス社、シャープ・スチュアート社と合併し、ノース・ブリティッシュ・ロコモティブとなります。これはアメリカを除けば世界最大の機関車製造会社でした。これにより、ニールソン・アンド・カンパニーの歴史に幕が閉じました。

現在も残るニールソン製機関車

ニールソン社が製造した機関車は、現在も世界各地で保存され、その技術力の高さを物語っています。ニュージーランドには複数のニールソン製機関車が保存されており、観光名所として人気を集めています。

フィクションにおけるニールソン

ニールソン製の機関車は、ウィルバート・オードリー作の『汽車のえほん』にも登場します。「ニール」という名の機関車は、ソドー島で活躍したボックス・タンク機関車として描かれています。また、そのテレビシリーズ作品である『きかんしゃトーマス』にも、ニールソン製の機関車「サムソン」が登場します。

ニールソン・アンド・カンパニーは、その歴史と技術革新によって、蒸気機関車の黄金時代を彩った重要なメーカーでした。その名は、今も多くの機関車愛好家の記憶に刻まれています。

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