ノーダブル

ノーダブル：アメリカ競馬史に名を刻んだ名馬

ノーダブル (Nodouble, 1965年 - 1990年) は、アメリカ合衆国のサラブレッド競走馬にして、後に成功を収めた種牡馬です。その活躍は、アメリカ競馬史に燦然と輝く一頁を刻みました。1969年と1970年には、アメリカ最優秀古牡馬の栄冠に輝き、種牡馬としても才能を発揮、1981年には北米リーディングサイアーに選出されるなど、競走馬、種牡馬として卓越した能力を証明しました。

華麗なる競走馬時代

アーカンソー州の石油採掘業者、ジーン・ゴフ氏の所有するヴァーナリー牧場で生産されたノーダブルは、2歳時は多くのステークス競走で好成績を残すものの、なかなか勝利を手にすることができませんでした。しかし、3歳時、オークローンパーク競馬場のアーカンソーダービー制覇をきっかけに、その才能が開花します。クラシック登録をしていませんでしたが、追加登録料を払って挑んだプリークネスステークスで3着、アメリカンダービーでは2着と好走。そして、ミシガンマイルアンドワンエイスハンデキャップでは、当時の最強馬と謳われたダマスカスを相手に勝利を収めました。続くホーソーンゴールドカップでは、トラックレコードタイ記録での優勝という快挙を成し遂げました。

4歳時になると、サンタアニタハンデキャップを制覇し、カリフォルニアンステークスでは再びトラックレコードタイを記録。東海岸へ舞台を移し、ブルックリンハンデキャップ、そしてホーソーンゴールドカップ連覇と、その勢いは留まることを知りませんでした。この頃、ライバルとしてアーツアンドレターズという強豪が台頭し、メトロポリタンハンデキャップ、ウッドワードステークス、ジョッキークラブゴールドカップでは惜しくも2着に終わりましたが、その存在感を示しました。当時、年度代表馬の選出基準は統一されておらず、DRF（デイリー・レーシング・フォーム）がアーツアンドレターズを選出した一方で、TRA（サラブレッド競馬協会）はノーダブルを最優秀古牡馬に選出するなど、その評価の高さがうかがえます。

5歳時にもサンタアニタパークのサンパスカルハンデキャップでトラックレコード勝ちを挙げ、カリフォルニアンステークスでは3着、メトロポリタンハンデキャップでは再びトラックレコードで優勝しました。TRAは2年連続でノーダブルを最優秀古牡馬に選出、その活躍は誰もが認めるものでした。1970年10月、競走生活に幕を閉じました。

種牡馬としての成功

1971年、ノーダブルは種牡馬として新たなキャリアをスタートさせます。カリフォルニア州、ケンタッキー州、フロリダ州と様々な牧場で繋養され、フロリダ州では大きな成功を収めました。その後、ケンタッキー州のスリーチムニーファームに移され、1990年にその生涯を終えました。ジョッキークラブの記録によると、産駒644頭中428頭が勝ち上がり、84頭がステークス競走を制覇。1981年には北米リーディングサイアーに輝くなど、種牡馬としても大きな成功を収めました。代表的な産駒には、ノークラス、オーバースケート、メアジードーツ、ハングリア、マグニフィセントリンディ、ノーレヴュー、ショッカーティーなどがいます。

知られざるエピソード

ノーダブルは、厩舎でホットドッグやハンバーガーを食べることを好んでいたという逸話も残っています。その人懐っこい性格も、多くの人々に愛された理由の一つでしょう。

血統と誕生秘話

ノーダブルの母アブラジェイは、1963年のキーンランドセールでジーン・ゴフ氏が3,200ドルで購入した馬です。ゴフ氏は1968年のセールで、ノーダブルを身籠ったアブラジェイを10万ドルで上場しましたが、落札されず、自ら引き取るというエピソードがあります。

ノーダブルは、競走馬としての輝かしい実績だけでなく、種牡馬としても成功を収め、アメリカ競馬史に大きな足跡を残した、まさに伝説的なサラブレッドでした。14もの競馬場を渡り歩いたことから「アーカンソー・トラベラー」の愛称で親しまれたその生涯は、多くの競馬ファンに語り継がれています。

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