ノー・ジオグラフィー

アルバム『ノー・ジオグラフィー』の概要

『ノー・ジオグラフィー』は、イングランド出身の電子音楽デュオ、ケミカル・ブラザーズが2019年にリリースした9枚目のスタジオ・アルバムです。この作品は、イギリスでは4月12日にヴァージンEMIレコードから、アメリカではアストラルワークから発表されました。アルバムには、ノルウェーの歌手オーロラと日本のラッパーNENEが参加しており、高い芸術性と国際的なコラボレーションが特徴です。特筆すべきは、このアルバムが第62回グラミー賞で最優秀ダンス／エレクトロニック・アルバム賞を受賞したことです。

背景とタイトルの由来

このアルバムのタイトルは、2018年11月に発表され、ニューヨークの詩人マイケル・ブラウンステインの詩「Geography」からインスパイアを受けています。タイトル曲「No Geography」には、詩人の声がサンプリングとして使われており、彼の文学的な影響が感じられます。また、アルバムのカバーアートは、ゴドレイ＆クレームの1977年のアルバム『Consequences』に収録された画像を用いており、独特のビジュアルセンスを醸し出しています。このビジュアルは、元イギリス陸軍のチーフテン戦車を背景にしたもので、戦車の砲身越しに高速道路が広がる印象的なものです。

プロモーション活動

アルバムから最初にリリースされたシングル「Free Yourself」は、2018年9月28日でした。続いて、2019年1月7日に「MAH (Mad as Hell)」が発表され、両曲にはミュージック・ビデオが制作されています。2月には「Got to Keep On」がミシェル・ゴンドリー監督によるビデオと共にリリースされたことが話題になり、この曲はさらにBBCのグラストンベリー・フェスティバルのテーマ曲となりました。続いて、3月には「We've Got to Try」がリリースされ、アルバムのプロモーションは引き続き盛況に行われました。ケミカル・ブラザーズは、2019年5月から北アメリカでのツアーを開始し、年末にはヨーロッパとオーストラリアでもツアーを行いました。

批評と評判

音楽レビューサイトのMetacriticでは、『ノー・ジオグラフィー』は20件のレビューを基に79点を得ており、一般的に好評を博したと評価されています。『NME』のトマス・スミスは、このアルバムを「またひとつの躍進」と評し、ケミカル・ブラザーズの成長を示しています。また、『エクスクレイム!』のルーク・ピアソンは、アルバムの後半は情熱がやや欠けているとしつつも、彼らの作品には興味が尽きないと述べています。さらに、音楽サイト「ピッチフォーク」は、サイケデリックな感覚とクラブ向けのバンガーが混ざりあった作品として評価し、ここ数年で最も楽しめるアルバムの一つに挙げています。

トラックリストとライナーノーツ

アルバムには、「イヴ・オブ・デストラクション」や「ガット・トゥ・キープ・オン」、さらには「ウィヴ・ガット・トゥ・トライ」など、多彩なトラックが収められています。それぞれの楽曲には他のアーティストのサンプリングが含まれており、その点でも興味深いです。例えば、「フリー・ユアセルフ」にはダイアン・ディ・プリマの詩が引用されるなど、音楽の枠を超えたクリエイティブなアプローチが見られます。これにより、アルバムが持つ多層的な意味がより深まっています。

このように、『ノー・ジオグラフィー』は音楽的な探求心を反映した作品であり、聴く者に新たな体験を提供しています。

もう一度検索