ノー・ニューヨーク

1978年にリリースされたコンピレーションアルバム『ノー・ニューヨーク』（No New York）は、アンティルス・レコードから発表され、ブライアン・イーノによってプロデュースされました。このアルバムは、ノー・ウェイヴという新しい音楽ジャンルの重要なきっかけとなりながら、4組のアーティストによる作品を収録しています。

背景

1970年代のニューヨーク、特にソーホー地区では、アーティストたちが集まるスペースでロックフェスティバルが開催されました。4日間にわたるこのイベントの中で、特に注目されたのがDNAとザ・コントーションズのパフォーマンスでした。さらに、最終日にはマーズとティーンエイジ・ジーザス・アンド・ザ・ジャークスが演奏し、観客を魅了しました。そんな中、トーキング・ヘッズのアルバム制作のためにニューヨークに訪れていたブライアン・イーノが、このイベントに参加したことで、彼の関心が集まりました。彼はこの4つのバンドを取り上げたコンピレーションを作るというアイデアを思いついたのです。

製作過程

イーノは各アーティストとミーティングを行い、自身のアパートでコンセプトを練りました。最初は、他のバンドも参加する予定でしたが、最終的にはこの4組だけが選ばれました。各バンドは4曲を提供し、全16曲が収録されることになりました。その後、アイランド・レコードにこのコンピレーションのアイデアを提案し、「ビッグ・アップル・スタジオ」でのレコーディングが始まりました。

イーノは、各バンドの演奏を忠実に記録することを重視し、編集を最小限に抑えました。ザ・コントーションズのメンバー、ジェームス・チャンスは、彼らのトラックはほとんど手を加えられずに録音されたものであると語っています。また、イーノは自らの制作スタイルを反映し、トラックにユニークなエフェクトを加えました。特に、「ヘレン・フォーズデイル」のギターパートではクリック音にエコーをかけるなどし、独特の響きを生み出しています。

リリースと評価

当初、アイランド・レコードからのリリースが検討されていましたが、アルバムがあまりにも実験的であるとの理由から、アンティルス・レコードからの発表に至りました。『ノー・ニューヨーク』は1978年にLPとして発売されましたが、ビルボードのチャートには影響を与えませんでした。また、アルバムの歌詞はレコードスリーブの内側に印刷されていたため、歌詞を読みたい場合はスリーブを破らなければならないという面白い仕様でした。

批評家はこのアルバムを評価する際に分かれました。『クリーム・マガジン』ではこの作品を「新しい思考材料を与える」という方向で高く評価されていた一方、『ローリング・ストーン』では「攻撃的なアンチ・メロディ」として厳しい批評が行われました。

廃盤となった歴史と再発

発表後、アルバムは賛否両論を引き起こし、特にアンティルス・レコードの倒産により、マスター音源が失われてしまうという事態が発生しました。結果として、市場での流通が難しくなり価格が高騰し、1995年には廃盤アルバムのトップ10に名を連ねることとなりました。

その後、1997年に日本でCDとして再発、続いて2005年にはアメリカでも再発が行われました。再発版は好意的に受け入れられ、音楽評論家からは今なお重要なレコードとして評価されています。『ブレンダー・マガジン』でもその影響力の大きさが認識され、長きにわたる音楽シーンへの貢献が再評価されたのです。

参加アーティスト

- ザ・コントーションズ

- ジェームス・チャンス (サックス、ボーカル)
- ドン・クリステンセン (ドラム)
- ジョディ・ハリス (エレキギター)
- パット・プレイス (スライドギター)
- ジョージ・スコット III (ベース)
- アデル・バーティ (エーストーン、オルガン)

- ティーンエイジ・ジーザス・アンド・ザ・ジャークス

- リディア・ランチ (ギター、ボーカル)
- ゴードン・スティーヴンソン (ベース)
- ブラッドリー・フィールド (ドラム)

- マーズ

- サムナー・クレーン (ギター、ボーカル)
- チャイナ・バーグ (ギター、ボーカル)
- マーク・カニンガム (ベース、ボーカル)
- ナンシー・アーレン (ドラム)

- DNA

- アート・リンゼイ (ギター、ボーカル)
- ロビン・クラッチフィールド (オルガン、ボーカル)
- イクエ・モリ (ドラム)

このように、『ノー・ニューヨーク』はその後の音楽シーンに多大な影響を与えた作品として今なお評価されています。

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