ハアブ

ハアブ暦：マヤ文明の365日暦

ハアブ暦は、古代マヤ文明において用いられた、365日を1周期とする太陽暦です。この暦は、20日を1ヶ月とする18の月と、名前を持たない不吉な5日間「ワイェブ」から構成されています。「ハアブ」とは、「おおよその1年」という意味も持ちます。

暦の構成

ハアブ暦は、18の各月と、0から19、または1から20までの数字を組み合わせることで日付を表します。月の始まりを示す「0」は「着座の文字」と呼ばれ、その月を支配する神が座に着くことを象徴していました。マヤの人々は、時を神々が支配すると考え、「日」の神、「月」の神、「年」の神が存在すると信じていました。このため、各月にはそれぞれの神が宿ると考えられ、20日ごとに支配権が次の神に移るという概念が暦に反映されていました。

18の月の名称は以下の通りです。

ポプ
ウオ
シプ
ソッツ
セック
シュル
ヤシュキン
モル
チェン
ヤシュ
サック
ケフ
マック
カンキン
ムワン
パックス
カヤブ
クムク

これらの360日間に、5日間の「ワイェブ」が加えられて365日となります。ワイェブは不吉な期間とされ、特別な儀式は行われませんでした。ただし、ハアブ暦には閏年が存在しないため、太陽の動きや季節とは徐々にずれが生じていました。しかし、マヤの人々はずれを理解した上で、暦を使用していました。

ハアブ暦は、260日周期のツォルキン暦と組み合わせて用いられ、約52年で1周期となる「カレンダー・ラウンド」を形成しました。

各月の儀式と特徴

ハアブ暦の各月には、それぞれ異なる儀式や特徴がありました。以下に、いくつかの月について説明します。

ポプ：最初の月であり、ジャガーが守護動物とされていました。新年を祝う盛大な儀式が行われ、人々は家財道具を新調し、古いものを処分しました。また、神々も時を守るために祭儀に集いました。

ウオ：2番目の月で、守護神はイツァムナーでした。神官が鳥占いを行い、その結果と託宣を発表しました。また、「月の踊り」という儀式も行われました。祭儀には、猟師、漁師、神官、巫女のみが参加しましたが、他の階級の人々も守護神に儀式を捧げました。

シプ：3番目の月で、蛇に似た神が守護神とされていましたが、その詳細は不明です。

ソッツ：4番目の月で、コウモリが守護動物とされていました。

セック：5番目の月で、養蜂家たちが蜂の神と4柱のバカブ神に豊作を祈る儀式を行いました。祭りの最後には、蜂蜜酒を飲んで神を称えました。

シュル：6番目の月で、守護神は不明ですが、16日にはククルカンに捧げる「チック・カバン」という祭りが行われました。

ケフ：12番目の月で、「新しい火の祭り」が行われました。

カンキン：14番目の月ですが、儀式や祝宴、守護神については不明です。

カヤブ：17番目の月で、特別な儀式はなく、人々は新年の祭りに備えました。

クムク：18番目の月で、特別な儀式はなく、人々は新年の祭りに備えました。

マヤ文字による月の表現

マヤ文字には、各月を表す固有の文字が存在しました。

[各月のマヤ文字を画像またはテキストで表現]

参考文献

コウ, マイケル・D.『マヤ文字解読』増田義郎監修、武井摩利・徳江佐和子訳、創元社、2003年。ISBN 978-4-422-20226-6。
ミラー, メアリ、タウベ, カール編 編『図説 マヤ・アステカ神話宗教事典』増田義郎監修、武井摩利訳、東洋書林、2000年。ISBN 978-4-88721-421-7。
ロンゲーナ, マリア『〈図説〉マヤ文字事典』植田覚監修、月森左知訳、創元社、2002年。ISBN 978-4-422-20232-7。

関連項目

ツォルキン

ハアブ暦は、マヤ文明の複雑な暦体系の一部であり、その天文学的な知識と宗教観を理解するための重要な手がかりとなっています。

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