増田義郎

増田義郎：ラテンアメリカ史研究の先駆者

増田義郎（1928年2月17日 - 2016年11月5日）は、日本の文化人類学者、歴史学者であり、ラテンアメリカ文化史研究の分野で多大な功績を残しました。東京大学名誉教授。

生涯

1928年、東京に生まれた増田義郎は、東京府立第六中学校（現東京都立新宿高等学校）を経て、東京大学文学部へ進学。英文学を専攻し、1950年に卒業しました。その後、東京大学教養学部にて教鞭を執り、専任講師、助教授、教授と昇進。1988年に定年退官し、東京大学名誉教授となりました。

定年退職後も、千葉大学文学部教授、亜細亜大学国際関係学部教授を歴任し、後進の育成に尽力しました。

研究内容

増田義郎の研究は、当初は英文学に始まりましたが、1950年代後半からラテンアメリカ史へと転向しました。インカ帝国、マヤ文明といった古代文明から、大航海時代（この時代の命名者の一人でもあります）、海賊といったテーマまで、幅広い領域を網羅。

その研究は、文献研究にとどまらず、イベリア半島やラテンアメリカへの豊富な調査旅行に基づいています。現地でのフィールドワークを通じて得られた知見は、彼の研究に深みとリアリティを与えました。

業績

増田義郎は、数多くの著作と翻訳を通じて、ラテンアメリカ史研究の発展に大きく貢献しました。

主な著書

『インカ帝国探検記――ある文化の滅亡の歴史』（中央公論社, 1961年）
『古代アステカ王国――征服された黄金の国』（中央公論社［中公新書］, 1963年）
『太陽の帝国インカ――征服者の記録による』（角川書店［角川新書］, 1964年）
『メキシコ革命――近代化のたたかい』（中公新書, 1968年）
『コロンブス』（岩波書店［岩波新書］, 1979年）
『略奪の海カリブ――もうひとつのラテン・アメリカ史』（岩波新書, 1989年）
『物語ラテン・アメリカの歴史――未来の大陸』（中公新書, 1998年）
『アステカとインカ――黄金帝国の滅亡』（小学館, 2002年）
『太平洋――開かれた海の歴史』（集英社新書, 2004年）

主な訳書

アコスタ『新大陸自然文化史』（岩波書店「大航海時代叢書」, 1966年）
シエサ・デ・レオン『インカ帝国史』（岩波書店「大航海時代叢書」, 1979年）
クック『太平洋探検』（岩波書店「17・18世紀大旅行記叢書」, 1992-94年）
フランシスコ・デ・ヘレス／ペドロ・サンチョ『インカ帝国遠征記』（中公文庫, 2003年）
ダニエル・デフォー『完訳 ロビンソン・クルーソー』（中央公論新社, 2007年）

受賞・栄典

瑞宝中綬章（2010年）
従四位（2016年）

増田義郎は、その生涯を通じて、ラテンアメリカ史研究の発展に大きく貢献しました。彼の著作や翻訳は、今日でも多くの人々に読み継がれ、ラテンアメリカに対する理解を深める上で重要な役割を果たしています。

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