ハイチ帝国 (1849年-1859年)

ハイチ帝国は、1849年にフォースタン＝エリ・スールーク将軍がフォースタン1世としてハイチ皇帝に即位することで成立しました。本記事では、その成立から崩壊、そしてその後のハイチの混乱について解説します。

ハイチ帝国の成立

独立後のハイチは、北部をアンリ1世が治めるハイチ王国、南部をジャン・ピエール・ボワイエが大統領として治めるハイチ共和国に分裂していました。1820年にアンリ1世が自殺すると、ボワイエがハイチを再統一しました。

1821年、イスパニョーラ島の東部を支配していたスペイン人のクリオージョが、スペイン・ハイチ共和国の独立を宣言し、コロンビア共和国への編入を求めて内戦を起こしました。ハイチは軍を侵攻させこの地域を併合し、全島に独裁体制を築いたことが、フランスの反発を招きました。当時のハイチは独立を承認されておらず、フランスからの独立承認の代償として、軍事侵攻に対する賠償金を支払うことになりました。この賠償金が重荷となり、ハイチ経済は困窮しました。

1843年、ボワイエの独裁に対しシャルル・リヴィエール＝エラールが蜂起し、ボワイエを失脚させました。しかし、その後も農民や軍人の反乱が相次ぎ、ハイチは無政府状態に陥ります。さらに1844年には、併合されていた東部のスペイン系住民がドミニカ共和国として独立するなど、国内は混乱を極めました。

この混乱を収拾したのが、当時の将軍フォースタン＝エリ・スールークでした。彼は後に大統領に就任し、1849年には帝政を宣言、皇帝フォースタン1世を名乗りました。

帝政の崩壊とその後

皇帝となったフォースタン1世は圧政を敷き、ハイチの民は困窮しました。秘密警察を国内に配備し、隣国ドミニカへの侵攻を繰り返しました。

しかし、10年後の1859年、皇帝に対して不満を持つファーブル・ジェフラール将軍が蜂起し、帝政は打倒されました。ハイチは共和制に復帰しましたが、国内情勢は悪化し、大統領の交代や内戦が頻発しました。一時的に安定の兆しが見えたものの、内政は安定せず、1915年にはアメリカ合衆国が債務返済を口実に海兵隊をハイチに上陸させ、占領しました。アメリカによる占領後もハイチの国情不安は続き、現在に至っています。

ハイチ帝国の成立と崩壊は、その後のハイチの歴史に大きな影響を与えました。政治的な混乱、経済的な困窮、そして外国からの干渉は、現代のハイチが抱える課題の根源となっています。

関連項目

ハイチ
ハイチ王国
ハイチ帝国 (1804年-1806年)
絶対君主制
* 中央アフリカ帝国 - 同様に、大統領が皇帝に即位した例。

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