ハイデルベルク城

ハイデルベルク城：ラインの丘に立つ歴史の証人

ドイツ、バーデン＝ヴュルテンベルク州ハイデルベルク市にあるハイデルベルク城は、ネッカー川を見下ろす丘の上に広がる、ドイツで最も有名な城跡の一つです。その歴史は古く、13世紀初頭にまで遡り、中世から近世にかけてプファルツ選帝侯の居城として栄えました。ルネサンス様式の建築様式が特徴的なこの城は、幾多の戦乱や火災に見舞われながらも、その雄大な姿と歴史の重みから、現在も人々を魅了し続けています。

13世紀からの歴史：築城と選帝侯の時代

ハイデルベルク城の最初の記録は1225年です。当初は、ライン宮中伯の居城として建設が始まったと考えられています。その後、バイエルン公が城主となり、1303年には「上の城」と「下の城」の2つの城が記録に残っています。14世紀以降、プファルツ選帝侯の居城として重要な役割を担うようになり、徐々に規模を拡大し、壮麗な宮殿へと発展していきました。

1401年には、プファルツ選帝侯ループレヒト3世がローマ王に選出されます。城は王の宮廷として使用されましたが、規模が小さかったため、アウグスティン修道院（現在のハイデルベルク大学）まで宮廷が拡張されたほどです。

1415年には、コンスタンツ公会議後の出来事として、対立教皇ヨハネス23世がここに幽閉されたという歴史も残っています。フランスの詩人ヴィクトル・ユーゴーも、1838年にハイデルベルクを訪れ、この城跡を散策し、その歴史を自身の作品に記しています。

戦乱の時代：破壊と再建

ハイデルベルク城の歴史は、数々の戦乱と不可分です。バーデン＝プファルツ戦争([1462年]])、三十年戦争]では、城は砲撃を受け、大きな被害を受けました。特に[[三十年戦争では、カトリック連合軍やスウェーデン軍の攻防の舞台となり、破壊と再建を繰り返すことになります。

1689年、プファルツ継承戦争においてフランス軍が城を破壊しました。1693年には、さらなる破壊が行われ、城はほぼ廃墟と化しました。

その後、選帝侯ヨハン・ヴィルヘルムはハイデルベルク市壁の再建を命じましたが、宮廷はマンハイムに移転され、城の修復は長らく放置されたままになります。1764年には落雷による火災が発生し、さらに大きな被害を受けました。

19世紀以降：保存と観光地化

19世紀に入ると、ハイデルベルク城は、ロマン主義の画家たちの作品に描かれるようになり、その廃墟美が注目を集めます。フランス人シャルル・ド・グライムベルクは城跡の保存活動を行い、ドイツにおける文化財保護の始まりを告げました。

1883年には、バーデン大公国政府によって「城館建築作業局」が設立され、城の現状調査と保存のための修復事業が本格的に開始されます。修復にあたっては、完全な復元ではなく、現状保存の方針がとられました。

19世紀後半からは、鉄道網の整備などもあってハイデルベルクへの観光客が増加し、ハイデルベルク城は、ドイツを代表する観光名所へと発展していきます。マーク・トウェインも1878年の著書『ヨーロッパ放浪記』でこの城について記述しています。

城の構成：様々な建物と庭園

ハイデルベルク城は、多くの建物や庭園から成り立っています。主な建物としては、ループレヒト館、フリードリヒ館、オットハインリヒ館、ルートヴィヒ館、イギリス館、図書館棟、婦人部屋棟（王の広間）、大樽棟、ガラスの広間棟、エコノミー棟などがあります。それぞれの建物には、選帝侯の名や、その機能に由来する名前が付けられています。

また、城内には、ディッカー塔、牢獄塔、城門塔（時計塔）、火薬塔、薬局塔といった塔があり、城の防衛機能を担っていました。これらの塔も、戦乱や火災によって被害を受けていますが、その歴史的価値から、現在も残されています。

城の周囲には、シュトュックガルテン、ホルトゥス・パラティヌスなどの庭園があり、選帝侯の優雅な生活を垣間見ることができます。エリーザベト門や、小鳥小屋（オランジュリ）といった、城の庭園に関連する遺構も残されています。

現代のハイデルベルク城：観光とイベント

現在、ハイデルベルク城は、年間100万人以上の観光客が訪れる、ドイツを代表する観光地となっています。城内では、様々なイベントが開催されています。夏のハイデルベルク城演劇祭では、城の内庭でシェイクスピア作品などの演劇が上演されています。

また、年に数回、シュロスベロイヒトゥンク（城を照らす）というイベントが開催され、花火を使って城の破壊を再現するなど、歴史とロマンが融合した体験を提供しています。

ハイデルベルク城は、その歴史と建築、そしてロマンチックな景観によって、多くの人々を魅了し続けています。

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