ハイブリッド芝

ハイブリッド芝とは

ハイブリッド芝、または強化型天然芝とは、天然芝に人工芝または人工繊維を一定の割合で混合して作られた芝のことです。主にサッカーやラグビーなどの球技場で使用され、天然芝の維持管理の難しさやコスト、使用頻度による劣化といった問題を解決するために開発されました。

概要

天然芝のピッチを維持するには、専門的な知識と技術、そして多大な費用が必要です。また、使用頻度が高いほどコンディションの維持が難しくなり、結果としてスタジアムの稼働率が低下してしまいます。そこで、天然芝の耐久性を高めるために、人工芝や人工繊維で根付きを補助するハイブリッド芝が生まれました。

ハイブリッド芝は、あくまで天然芝の補強を目的としているため、人工芝・人工繊維の割合は通常5%以下です。そのため、日常のメンテナンスは通常の天然芝グラウンドと大きく変わりません。

ハイブリッド芝の種類

ハイブリッド芝は、敷設方法によって大きく3つの種類に分けられます。

1. 打ち込み式（ステッチ式）

天然芝の表面に、特殊な人工芝繊維を一定間隔で打ち込む方法です。打ち込みの深さは9〜18cm、地上に出ている部分は約2cmです。

この方法では、芝の表面の踏みつけやねじれ、摩擦に対する強度が増し、人工繊維によって雨水が誘導され、排水性が向上します。ただし、排水性が高すぎるため、散水や施肥の頻度を増やす必要があります。

2. カーペット式

長さ6〜7cmの人工芝カーペットを敷き、その上から砂などを撒いて天然芝の種子を蒔いて育てます。

芝の基盤を整えやすく、外部で育成させてから敷設できるため、早期の使用が可能です。しかし、打ち込み式と同様に排水性が高すぎるため、散水や施肥の頻度を増やす必要があります。また、すり切れにはやや弱いというデメリットもあります。

3. 人工繊維補強式

人工基盤材（珪砂・マイクロファイバー・炭化コルク粒の混合材）を敷き、その上に天然芝の種子を蒔く方法です。

天然芝の根がマイクロファイバーに絡みつくことで、芝が剥がれにくくなります。また、人工基盤材の保水力により、散水や施肥の頻度を減らすことができます。ただし、現地の土壌との馴染みが良くないという点が課題です。

注意点

ハイブリッド芝は、あくまで天然芝の生育を補助するものです。そのため、天然芝の育成環境が悪いスタジアムでは、ハイブリッド芝も十分に育ちません。また、イベント時に機材や装置などの重量をハイブリッド芝が受け止めるわけではなく、芝へのダメージは従来と変わりません。

海外での普及

ハイブリッド芝は、1990年代からヨーロッパで導入され、普及が進んでいます。初期にはグラウンドが硬くなりやすいという問題点がありましたが、技術改良によって改善されつつあります。2010 FIFAワールドカップやラグビーワールドカップ2015など、多くの国際大会で使用されています。

日本での導入

日本では、2017年にJリーグが翌シーズンからホームスタジアムのピッチに打ち込み式のハイブリッド芝を導入することを承認しました。最初に導入されたのは、ヴィッセル神戸のホームスタジアムであるノエビアスタジアム神戸です。

ラグビーワールドカップ2019の会場でも、ノエビアスタジアム神戸をはじめ、横浜国際総合競技場（日産スタジアム）、東京スタジアム（味の素スタジアム）、大分スポーツ公園総合競技場（レゾナックドーム大分）などでハイブリッド芝への張り替えが行われました。新設された釜石鵜住居復興スタジアムにも、人工繊維補強式のハイブリッド芝が導入されています。

陸上競技場における規定

陸上競技場においては、日本陸上競技連盟の公認競技場規則で、インフィールドを「天然芝とする」と規定していました。しかし、2018年に規定が改正され、「天然芝・投てき実施可能な人工芝とする（ハイブリッド芝を採用する場合は人工芝の混入率を5％以下とする）」となりました。これにより、品質検査で基準を満たした人工芝・ハイブリッド芝の敷設が可能になっています。

主な商品

GrassMaster（打ち込み式）
SISGrass（打ち込み式）
AirFibr（人工繊維補強式）
XtraGrass（カーペット式）
* HERO（カーペット式）

※住友ゴム工業の「ハイブリッドターフ」は、ロングパイル人工芝であり、本稿で解説したハイブリッド芝とは異なる製品です。

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