ハイランダー

ハイランダー：スコットランド高地地方の歴史と文化

ハイランダーとは、スコットランド北部のハイランド地方に住む人々を指します。ハイランド地方は、南東のローランド地方との間に「ハイランドライン」と呼ばれる境界を持ち、この境界線は断層線とほぼ一致しています。自然条件と地理的要因が、ハイランドとローランドの交流を困難にし、両地域の住民が共通の祖先を持ちながらも異なる特徴を形成するに至りました。

ゲール語文化圏としてのハイランド

かつて、ゲール語文化圏としてのハイランドは、ローランド地方とほぼ同じ面積を有していました。人口は16〜17世紀にはローランドの半分程度、18世紀には3分の1程度と推計されています。しかし、18世紀後半から19世紀にかけての生産構造の変化に伴うハイランドクリアランス（強制的な小作権の取り上げ）により、多くの住民が土地を離れ、人口が激減しました。

軍隊におけるハイランダー

イギリス軍には、ブラックウォッチやスコッツ・グレイなどの精鋭部隊をはじめ、ハイランダーで組織された連隊が存在します。これらの連隊は「ハイランダーズ（高地連隊）」と呼ばれ、タム・オ・シャンターと呼ばれるベレー帽に似た帽子を被り、タータンチェックのキルトまたはズボンを着用し、バグパイプ演奏者が随行することで知られています。

スコットランドの歴史とハイランド

スコットランドには、もともとケルト系のピクト人などが居住していましたが、古代からローマ帝国、アイルランド、イングランド王国、ヴァイキングなど、さまざまな勢力の軍事的・文化的侵略にさらされました。ローマ帝国の衰退後、アイルランド北東部にいたスコット人が移住し、ピクト人やブリトン人を制圧し、9世紀までにスコットランドの優位が確立したとされています。

スコットランド内部では、特に北方の僻地であるハイランドにおいて氏族制社会が長く続きました。一方、ローランド地方では産業化が早くから進み、イングランドとの国境に接していることからイングランドの影響を強く受けました。そのため、ハイランドはローランドとは異なる文化的伝統を維持し、独自のケルト文化やカトリック信仰が保護・強調され、それが高い士気につながりました。

ハイランドの貧困と傭兵

山岳部や周辺海域の島々という地理的条件から、ハイランドは外界との交流が困難で、文明の浸透が遅れました。生活環境も厳しく、貧しい土地であったため、ハイランダーは兵士を資源として提供し、傭兵としてイングランドやヨーロッパ諸国へ赴くことが多くありました。また、ローランド地方への略奪や、氏族間の争いも頻繁に発生しました。しかし、ハイランダーの勇猛さはイングランドをはじめとするヨーロッパ諸国で高く評価され、15世紀にはフランスのシャルル7世がスコットランド人部隊を近衛兵として創設しました。

ハイランダーの歴史は、スコットランドの歴史と深く結びついています。彼らの文化、伝統、そして勇猛さは、今もなお語り継がれています。

関連項目：
ハイランド地方
ケルト人
ブレイブハート
ジャコバイト
ハッカペル
グルカ兵

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