ハインリヒ3世 (バイエルン公)

ハインリヒ3世：公位を巡る激動の生涯

ハインリヒ3世（940年 - 989年10月5日）は、10世紀のドイツに生きた貴族であり、ケルンテン公とバイエルン公を歴任しました。ルイトポルト家の出身で、父はバイエルン公ベルトルトです。「若公」または「若年公」とも呼ばれていました。

生涯

ハインリヒ3世の父ベルトルトは947年に亡くなりましたが、バイエルン公位は、ベルトルトの兄アルヌルフ悪公の娘婿であり、東フランク王ハインリヒ1世の息子であるハインリヒ1世に与えられました。その後、ハインリヒ1世の子ハインリヒ2世がバイエルン公位を継承しましたが、976年に神聖ローマ皇帝オットー2世に対して反乱を起こしたため、バイエルンはハインリヒ2世から没収され、分割されることになりました。その際、ケルンテン（およびヴェローナとアクイレイア）は公領として独立し、ハインリヒ3世に与えられました。

しかし、ハインリヒ3世もまた、976年に前バイエルン公ハインリヒ2世の反乱（「三ハインリヒの反乱」）に加担したため、978年に裁判にかけられ、ケルンテン公位を剥奪されてしまいます。

982年、ハインリヒ2世の後を継いでバイエルン公となっていたシュヴァーベン公オットー1世が後継者なく亡くなると、皇帝オットー2世はバイエルン公位をハインリヒ3世に与えました。これにより、947年の父ベルトルトの死から36年ぶりに、バイエルン公位がルイトポルト家に戻ることになりました。

しかし、983年にオットー2世が亡くなると、ハインリヒ2世が新皇帝オットー3世の後見候補として名乗りを上げ、諸侯と対立しました。その結果、母后テオファヌの摂政就任が認められることとなり、その見返りとして985年、ハインリヒ2世に再びバイエルン公位が与えられることになりました。これに伴い、それまでバイエルン公位にあったハインリヒ3世は、代わりに再びケルンテン公位を与えられました。

989年、ハインリヒ3世は後継者を残すことなく亡くなり、ケルンテン公位はバイエルン公ハインリヒ2世に与えられました。

ハインリヒ3世の生涯は、当時の権力闘争の激しさと、それによって翻弄される貴族たちの姿を浮き彫りにしています。彼は、自らの地位を確立するために奔走しましたが、時代の波に乗り切れず、最終的には後継者を残すことなくこの世を去りました。

参考文献

瀬原義生 『ドイツ中世前期の歴史像』 文理閣、2012年
Stolberg-Wernigerode, Otto zu: Neue deutsche Biographie, Bd.: 8 Hartmann - Heske, 1969, p.341

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