ルイトポルト家

ルイトポルト家は、中世ドイツにおいてバイエルン大公を輩出したことで知られる諸侯の家系です。別名、ルイトポルディング家、アルヌルフィング家とも呼ばれます。

ルイトポルト家の勃興

ルイトポルト家の祖であるルイトポルトは、東フランク王カールマンの側近として頭角を現しました。893年には、東フランク王アルヌルフによってバイエルン辺境伯に任じられ、バイエルン全域の統治を委託されることとなります。ルイトポルトは、アルヌルフの死後、その子である幼王ルートヴィヒ4世の摂政を務めましたが、907年にマジャール人との戦い（プレスブルク近郊）で戦死しました。

アルヌルフ悪公の時代

ルイトポルトの死後、その子アルヌルフ（悪公）が家督を相続しました。アルヌルフは、教会高権を含むバイエルンの自立的支配権を掌握し、自ら「大公」を名乗ります。母方の伯父にあたるシュヴァーベン大公エルハンガーおよびベルトルト兄弟と共に、コンラディン家出身の東フランク王コンラート1世と対立し、一時ハンガリーへ亡命する事態となりました。917年に帰国したアルヌルフは、コンラート1世が派遣した弟エーバーハルトを追放し、さらに進軍してきたコンラート1世に傷を負わせて退却させています。この時の傷がもとで、コンラート1世は翌918年に死去しました。一説には、アルヌルフは翌年、「バイエルン人と東フランケン人に切望されて王となった」とも伝えられています。

王家との確執と大公位の変遷

しかし、新王ハインリヒ1世の921年のバイエルン遠征においてアルヌルフは降伏し、ハインリヒ1世からバイエルンにおけるこれまでの権利と大公位を追認され、統治を委ねられることとなりました。アルヌルフの死後は、子のエーバーハルトが大公位を継承しましたが、938年に皇帝オットー1世に対し教会高権の返還を拒否したため、追放されました。その後、アルヌルフ悪公の弟ベルトルトが大公位を継承しますが、947年にベルトルトが死去した際、皇帝オットー1世は、ベルトルトに男子相続人がいたにもかかわらず、自身の弟でアルヌルフ悪公の婿にあたるハインリヒ1世にバイエルン大公位を授けました。

その後、ハインリヒ1世の子ハインリヒ2世の反乱により、ベルトルトの子ハインリヒ3世はバイエルン大公位を取り戻しますが、985年にハインリヒ2世に再び大公位を奪われ、ハインリヒ3世は代わりにケルンテン大公位を与えられました。ハインリヒ3世は989年に死去し、ルイトポルト家からバイエルン大公位は離れることとなりました。なお、同家（アルヌルフ悪公）からヴィッテルスバッハ家やバーベンベルク家が出たとされる説も存在します。

系図

（省略）

参考文献

成瀬治 他 編 『世界歴史大系 ドイツ史 1』 山川出版社、1997年
服部良久 『叙任権闘争期前後のドイツ東南部における貴族とラント』 京都大学文学部研究紀要 (1994), 33: p.1-128
下津清太郎 編 『世界帝王系図集 増補版』 近藤出版社、1982年
エーリヒ・ツェルナー 『オーストリア史』 彩流社、2000年
Benno Hubensteiner, Bayerische Geschichte : Staat und Volk, Kunst und Kultur, Süddeutscher, 1977.
Karl Lechner, Handbuch der historischen Stätten Österreich. v. 1. Donauländer und Burgenland, A. Kröner, 1970.

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