ハインリヒ7世 (ドイツ王)

ハインリヒ7世：ホーエンシュタウフェン朝ローマ王の悲劇

ハインリヒ7世（1211年-1242年）は、第二次ホーエンシュタウフェン朝におけるローマ王（在位：1220年-1235年）でした。神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世とアラゴン王女コンスタンサの間に生まれた彼は、幼い頃にローマ王位を継承しましたが、父との深い確執が、彼の短い生涯を悲劇へと導きます。

王位継承と父との確執

ハインリヒ7世は、シチリア王フェデリーコ（フリードリヒ2世）の長男としてシチリア島で誕生しました。フリードリヒ2世がローマ王、そして神聖ローマ皇帝として戴冠した際、幼少のハインリヒ7世はローマ王位を継承することとなります。しかし、フリードリヒ2世は教皇との対立により、皇帝としての権威とローマ王としての実権を両立することができませんでした。このため、ハインリヒ7世は名目上のローマ王に過ぎず、実質的な権力は持ちませんでした。

フリードリヒ2世は、イタリア全土の支配を強める一方、アルプス以北の諸侯には様々な特権を与え、懐柔策を講じていました。この政策は、ローマ王としての権威を著しく弱体化させ、ハインリヒ7世との確執を深める要因となりました。父と子の交流は極めて乏しく、ハインリヒ7世は、父親の支配下に置かれた「ドイツ総督」のような存在に過ぎなかったのです。

反乱と廃位

ハインリヒ7世は20歳頃には、フリードリヒ2世の政策に疑問を抱き始めます。イタリアにおける王権強化とアルプス以北諸侯への優遇という相反する政策、宗教観の違い、そして帝国の財政難などが、反発心を強める要因となりました。さらに、彼はボヘミア王女アネシュカとの結婚を望み、既に結婚していた妃マルガレーテとの離婚を計画しますが、これはフリードリヒ2世の意向に反するものでした。

リエージュの市民と司教の争いに際し、ハインリヒ7世は市民側に立ったことから帝国諸侯の反発を招き、1234年にはロンバルディア同盟と結託して反乱を起こします。しかし、ハインリヒ7世は諸侯からの支持を得られず、フリードリヒ2世に敗北。1235年、彼は廃位され、王位と全財産を没収されました。

最期

廃位後、ハインリヒ7世はハイデルベルクに幽閉され、その後目を潰されてアプーリアに移送されました。彼はメルフィ近郊の獄中で6年間を過ごし、ニカストロへの移送途中、崖から転落して死亡しました。この死は事故ではなく自殺とされており、絶望の淵に立たされた彼の決断だったと考えられています。しかし、フリードリヒ2世は彼の赦免を決定していたという説もあり、父としてはその死を深く悼んだと伝えられています。

人物像

ハインリヒ7世は、曖昧で移り気、無計画な性格の持ち主として描かれています。その性格が帝国諸侯との対立を招いたとされています。一方で、彼は父フリードリヒ2世譲りの詩歌への感性を持っており、廃位後も歌い続けたという逸話が残されています。彼の遺体からはハンセン病の痕跡が発見されており、病に苦しむ中で最期を迎えた可能性も指摘されています。

家族

ハインリヒ7世は1225年にオーストリア公レオポルト6世の娘マルガレーテと結婚しましたが、子供たちは早世しました。ハインリヒ7世の死後、マルガレーテはオタカル2世と再婚しています。

ハインリヒ7世の生涯は、権力闘争と悲劇に満ちたものでした。幼い頃に王位を継承したものの、父との確執、政治的失敗、そして病に苦しむ中で、彼は短い生涯を終えたのです。彼の物語は、中世ヨーロッパにおける権力構造と人々の運命の複雑さを改めて私たちに示唆しています。

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