ハインリヒ7世 (神聖ローマ皇帝)

ハインリヒ7世：ルクセンブルク家から神聖ローマ皇帝へ

ハインリヒ7世(1275年-1313年)は、ルクセンブルク伯を父から継承したのち、1308年にローマ王(ドイツ王)に選出され、1312年には神聖ローマ皇帝に戴冠した人物です。彼は、ルドルフ1世から始まるローマ王家の4代目の後継者であり、ルクセンブルク家から初めて皇帝の座に就いた歴史的な人物として知られています。

ルクセンブルク伯からローマ王へ

ハインリヒ7世は、フランス語を母語とし、ドイツ語にも堪能な人物でした。ルクセンブルク伯としてフランス王の封建家臣でもありました。1308年、前任者であるアルブレヒト1世が暗殺されたことを受けて、教皇クレメンス5世や選帝侯たちの支持を得て、ローマ王に選出されました。この選出には、フランス王フィリップ4世が自らの弟をローマ王にしようと画策していた動きを阻止しようという思惑が背景にありました。

アーヘンでの戴冠後、ハインリヒ7世は勢力拡大に動き出します。スイスの一部領有や、息子のヨハンとボヘミア王ヴァーツラフ3世の妹との縁組を通してボヘミア王位を獲得するなど、短期間のうちにルクセンブルク家の影響力を神聖ローマ帝国において最大級のものへと高めました。

イタリア遠征と皇帝戴冠、そして最期

皇帝としての権威を確固たるものとするため、ハインリヒ7世はイタリア遠征を決行します。しかし、彼のイタリア侵入は内乱を激化させ、ローマへの到着には2年もの歳月を要しました。アヴィニョンに滞在していた教皇はローマへ赴くことはなく、ハインリヒ7世は皇帝としての戴冠を、同行していた皇帝派の枢機卿たちによって執り行うこととなりました。

その後、ナポリ遠征に出かけますが、その途中でマラリアに倒れ、1313年に死去しました。皇帝権力の伸張を快く思わなかったフランスや教皇派による暗殺説も存在します。ピサ大聖堂に埋葬されたのち、のちに近隣のカンポサントに移され、20世紀初頭に再びピサ大聖堂に戻されました。

ダンテやフィレンツェの政治家からの評価

ハインリヒ7世のイタリア遠征の際には、詩人ダンテが彼の政策を『帝政論』の中で高く評価しました。ダンテによる理想化された皇帝像は、後世のハインリヒ7世に対するイメージに大きな影響を与えています。フィレンツェの政治家ディーノ・コンパーニも、ハインリヒ7世に大きな期待を寄せ、「神の子羊」「イタリアの矯正者」と呼び称えました。

まとめ

ハインリヒ7世は、ルクセンブルク伯からローマ王、そして神聖ローマ皇帝へと上り詰めた、歴史に名を刻む人物です。短期間ながらも、積極的に政治を行い、ルクセンブルク家の勢力を拡大させました。しかし、イタリア遠征の最中に病死したことは、彼の皇帝としての野望を途中で断ち切ることとなりました。ダンテを始めとする文化人からの高い評価は、彼の歴史における位置づけをより複雑で興味深いものとしています。彼の生涯は、中世ヨーロッパにおける権力闘争と、皇帝権威の維持・拡大という課題を浮き彫りにするものです。

家族

ハインリヒ7世は、ブラバント公ジャン1世の娘マルグリットと結婚し、ヨハン、マリー、ベアトリクスの子をもうけました。息子のヨハンは後の神聖ローマ皇帝カール4世の父となります。

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