ハウリン・ウルフ

ハウリン・ウルフ：ブルースの巨星

ハウリン・ウルフ（Howlin' Wolf）、本名チェスター・アーサー・バーネットは、1910年6月10日にミシシッピ州で生まれ、1976年1月10日に生涯を閉じたアメリカのブルース歌手です。その名の通り、狼の遠吠えを思わせる強烈なダミ声が特徴で、一度聴いたら忘れられない鮮烈な印象を聴衆に与えました。没後の1991年には、ロックの殿堂の「アーリー・インフルエンス」部門入りを果たし、彼の音楽的功績は広く認められています。

生涯

1940年代頃からテネシー州メンフィスで音楽活動を始めたハウリン・ウルフですが、デビューは1951年と遅咲きでした。デビュー後はチェス・レコードと契約し、長年にわたり同社から作品を発表し続けました。1952年にシカゴへ移住する際、ギタリストのウィリー・ジョンソンが同行を拒否したため、ヒューバート・サムリンが後任として加入。サムリンは1954年の初セッションからウルフの死まで、その独特なギター演奏で楽曲に欠かせない存在となりました。1959年には初のLP『モーニン・イン・ザ・ムーンライト』を発表。その後も『ハウリン・ウルフ』、『リアル・フォーク・ブルース』、『モア・リアル・フォーク・ブルース』、『ザ・ロンドン・ハウリン・ウルフ・セッションズ』、『チェンジ・マイ・ウェイ』など、数々の名作を世に送り出しました。

1968年には、当時の流行に合わせたサイケデリックなアルバム『ハウリン・ウルフ・アルバム』を制作。これはマディ・ウォーターズの『エレクトリック・マッド』の続編とも言える内容でしたが、ウルフ自身はこのコンセプトを嫌い、3日間自宅に籠って抗議したというエピソードが残っています。この出来事は、彼の音楽に対する強いこだわりと、自己を貫く姿勢を象徴しています。1970年代に入ると、交通事故の後遺症などで体調を崩し、往年の勢いを失っていきましたが、それでも音楽活動を続けました。1972年にはライブ盤『Live and Cookin' (At Alice's Revisited)』、1973年にはスタジオ盤『The Back Door Wolf』を発表し、後者が彼の最後の作品となりました。1976年、彼はイリノイ州ハインズで息を引き取りました。

ロックへの影響

ハウリン・ウルフは、1960年代以降、英米のロッカーたちに多大な影響を与えました。彼の楽曲は数多くのミュージシャンによってカバーされており、特にロンドンでレコーディングされた『ザ・ロンドン・ハウリン・ウルフ・セッションズ』には、エリック・クラプトン、ローリング・ストーンズのビル・ワイマンとチャーリー・ワッツ、イアン・スチュアート、クラウス・フォアマン、リンゴ・スター、スティーヴ・ウィンウッドなど、錚々たるメンバーが参加しました。レッド・ツェッペリンの「レモン・ソング」は、ウルフの「キリング・フロア」が原曲であり、後にウルフの名前も共作者としてクレジットされるようになりました。また、レッド・ツェッペリンのデビュー・アルバムに収録されている「ハウ・メニー・モア・タイムズ」の歌詞の一部は、ウルフの「ハウ・メニー・モア・イヤーズ」から引用されたと言われています。

ディスコグラフィ

オリジナル・アルバム

『モーニン・イン・ザ・ムーンライト』 - Moanin' in the Moonlight（1959年、Chess）
『ハウリン・ウルフ』 - Howlin' Wolf（1962年、Chess）※通称：ザ・ロッキン・チェア・アルバム
『リアル・フォーク・ブルース』 - Real Folk Blues（1966年、Chess）
『モア・リアル・フォーク・ブルース』 - More Real Folk Blues（1967年、Chess）
『ザ・スーパー・スーパー・ブルース・バンド』 - The Super Super Blues Band（1968年、Checker）※マディ・ウォーターズ、ボ・ディドリーとの共演
『ハウリン・ウルフ・アルバム』 - The Howlin' Wolf Album（1969年、Cadet）
『メッセージ・トゥ・ザ・ヤング』 - Message to the Young（1971年、Chess）
『ザ・ロンドン・ハウリン・ウルフ・セッションズ』 - The London Howlin' Wolf Sessions（1971年、Chess）
『ライヴ・アンド・クッキン』 - Live and Cookin' (At Alice's Revisited)（1972年、Chess）
『ザ・バック・ドア・ウルフ』 - The Back Door Wolf（1973年、Chess）

編集盤

『チェンジ・マイ・ウェイ』 - Change My Way（1975年、Chess）
Cadillac Daddy: Memphis Recordings, 1952（1989年、Rounder）
Howlin' Wolf Rides Again（1991年、Flair/Virgin）
The Chess Box（1991年、Chess/MCA）
Ain't Gonna Be Your Dog-Chess Collectibles, Vol. Two（1994年、Chess/MCA）

カバー曲

「リトル・レッド・ルースター」 - ローリング・ストーンズ

関連項目

デルタ・[[ブルース]]
ブルース・ロック

外部リンク

ハウリン・ウルフ・ファン・サイト （英語）
The (unofficial) Howlin' Wolf Web Site （英語）
ハウリン・ウルフの写真集 （英語）
ハウリン・ウルフの墓地 （英語）
ブルース・ファウンデーション殿堂 （英語）
ハウリン・ウルフ - Find a Grave（英語）

ハウリン・ウルフは、その独特な歌声と音楽性で、ブルースだけでなくロック界にも大きな影響を与えた偉大なアーティストです。

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