ハエドゥイ族

ハエドゥイ族の歴史

ハエドゥイ族は、古代ガリアに居住していた有力な部族の一つです。彼らは、現在のフランス中東部、ソーヌ川とローヌ川に挟まれた地域を主な居住地としていました。この地域は、当時ローマ帝国の属州であったガリア・ルグドゥネンシスに含まれていました。

歴史を遡ると、ハエドゥイ族の元々の居住地は、ソーヌ川とドゥー川に挟まれた地域であったとされています。彼らの主邑はビブラクテという都市で、この都市は部族の中心として重要な役割を果たしていました。紀元前6世紀には、ハエドゥイ族の一部がイタリア半島へのガリア軍の侵攻に参加した記録も残っています。

ハエドゥイ族は、ローマとの関係を通じて力を増強しました。ローマからの支援を受け、ガリアでアルウェルニ族と並ぶ有力部族へと成長。紀元前123年には、ローマから「ローマ国民の兄弟と血縁者」という非常に名誉ある称号を与えられました。この称号は、ハエドゥイ族とローマとの間の強い絆を示しています。

しかし、ハエドゥイ族の繁栄は長くは続きませんでした。紀元前70年頃、アルウェルニ族の一派であるセクアニ族が、ゲルマン人のスエビ族の族長アリオウィストゥスと同盟を結び、ハエドゥイ族と激しく争いました。この戦いでハエドゥイ族は敗北を喫し、多く人質をセクアニ族に差し出すこととなり、一時的にその支配下に置かれることになりました。

その後、アリオウィストゥスがセクアニ族を抑え込む形でガリアに定住しようとしたため、紀元前61年頃にセクアニ族からの要請でハエドゥイ族はアリオウィストゥスと再び戦うことになりました。しかし、アドマゲドブリカでの戦いではハエドゥイ族は大敗を喫しました。当時のハエドゥイ族の有力者であったディウィキアクスは、この窮状をローマ元老院に訴えましたが、執政官であったカエサルがアリオウィストゥスを「ローマ国民の友」としていたため、この訴えは失敗に終わりました。この出来事は、ローマの影響力がガリアに深く浸透していたことを示唆しています。

紀元前58年、カエサルがガリア総督として着任し、アリオウィストゥスをゲルマニアへと追放したことで、ハエドゥイ族はスエビ人の支配から解放されました。その後、紀元前52年にウェルキンゲトリクスを指導者とするガリア全土での蜂起にハエドゥイ族も参加しましたが、この蜂起は最終的にローマ軍に鎮圧されました。ハエドゥイ族は、敗北後ローマ側へ降伏し、その支配下に入りました。

アウグストゥスの時代になると、ハエドゥイ族の主邑であったビブラクテは取り壊され、新たにアウグストドゥヌム（現在のオータン）が建設されました。ハエドゥイ族の人々は、この新しい都市へと移住し、その後、ローマ帝国の政府高官を多数輩出しました。

ハエドゥイ族の歴史は、ガリアの部族がローマとの関係の中で翻弄されながらも、自らの存在を維持しようとした歴史を象徴しています。彼らの興亡は、古代ヨーロッパの歴史を理解する上で重要な一例と言えるでしょう。

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