ハコベラ

ハコベラ

ハコベラ（学名：Thalassoma quinquevittatum）は、スズキ目ベラ科に属する魚類の一種であり、その鮮やかな色彩と活発な行動で知られています。主に西-中央太平洋のサンゴ礁に生息し、多様な海洋生態系の一員として重要な役割を果たしています。

分布と生息環境

ハコベラは、インド洋から西部太平洋にかけての熱帯海域に広く分布しています。日本では、主に沖縄本島以南の沿岸で見られます。浅い海のサンゴ礁を好み、日中は活発に泳ぎ回り、夜間はサンゴや岩の隙間で休息します。サンゴ礁はハコベラにとって、餌となる甲殻類が豊富であり、外敵から身を守るための隠れ家ともなる重要な生息環境です。

形態

ハコベラの全長は、最大で15-17cm程度に成長します。雌雄で体色が大きく異なる性的二形を示すことが特徴です。また、成長段階によっても体色が変化し、幼魚、若魚、成魚で異なる模様や色彩を見せます。これにより、繁殖行動や社会的なコミュニケーションにおいて、重要な役割を果たしていると考えられています。背鰭は8棘12-14軟条、臀鰭は3棘10-12軟条で構成されています。

生態

ハコベラは肉食性で、主に甲殻類を捕食します。サンゴ礁周辺を活発に泳ぎ回り、小さな甲殻類や底生生物を積極的に探し回ります。雄は縄張り意識が強く、単独で行動することが多いです。繁殖期には、雄は鮮やかな婚姻色を帯び、雌を求めて求愛行動を行います。ベラ科の魚類は、性転換を行う種も存在しますが、ハコベラにおける性転換の有無については、まだ詳しい研究が進んでいません。

人間との関わり

ハコベラは、観賞魚として人気があり、アクアリウムで飼育されることもあります。しかし、飼育には適切な水質管理と餌が必要であり、注意が必要です。また、ハコベラが生息するサンゴ礁は、地球温暖化や海洋汚染の影響を受けており、その保全が重要な課題となっています。サンゴ礁生態系を守ることは、ハコベラをはじめとする多くの海洋生物の保護につながります。

参考文献

岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2

外部リンク

FishBase ‐ ハコベラ （英語）

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