ハコボ・アルベンス・グスマン

はじめに

ハコボ・アルベンス・グスマン（Jacobo Árbenz Guzmán）は、1913年にグアテマラで生まれた軍人であり政治家です。彼は1944年の革命に参加し、「人民の兵士」と称され、1951年から1954年にかけてグアテマラの大統領を務めました。アルベンスは、社会主義的な改革を推進し、特に農地改革で知られています。しかし、彼の政権は1954年にアメリカの中央情報局（CIA）によるクーデターで終焉を迎えました。本記事では、彼の生涯、政治的業績、及びその後の影響について詳述します。

幼少期と軍人としての台頭

アルベンスはケツァルテナンゴで比較的裕福な家庭に生まれましたが、父の経済的な失敗により家庭は困窮。大学進学を断念し、227校の士官学校に入学しました。彼が士官学校で優秀な成績を収めたことは、その後の軍人としてのキャリアに大きな影響を与えました。1935年に卒業した後は、グアテマラシティの駐屯地で勤務し、1937年からは士官学校の教官として教鞭を執りました。

特に、後の妻マリアとの出会いを通じて、アルベンスはマルクス主義に関心を持つようになります。彼女の影響によって政治的思想が形成され、その後の政治活動に強く作用しました。

大統領としての改革

アルベンスは1950年の大統領選挙に立候補し、成功を収めました。彼は就任演説で、グアテマラの経済体制を改善し、封建的な経済から現代的な市場経済への移行を目指すことを表明しました。その政策は民主社会主義を基盤とし、福祉の充実を追求しました。特に農地改革は、当時国土の70%を占める土地をわずか2%の人口が所有するという状況を改善するため、農業委員会に権限を与える布告900を制定しました。

農地改革によって、多くの農民が恩恵を受け、その結果、138,000世帯以上が新たに土地を所有できるようになりました。この改革は、理論的な成功を収めましたが、その一方でアメリカ合衆国との関係を悪化させる一因ともなります。特に、ユナイテッド・フルーツ社をはじめとするアメリカ企業との緊張が高まりました。

クーデターと失脚

1954年、アルベンス政権はCIAによる「PBSUCCESS作戦」なるクーデターを受けて失脚します。アメリカ政府は、彼の社会主義的政策を共産主義化と捉え、積極的に介入した結果、アルベンスは辞任を余儀なくされました。クーデター後、カルロス・カスティージョ・アルマス大佐が新たに権力を握り、グアテマラは独裁政権への道を歩むこととなります。

後半生と流浪

辞任後、アルベンスはメキシコに亡命し、その後スイス、パリ、プラハを転々としました。彼は国外での生活に苦しむ一方で、各地で支持者と交流を持ち続けましたが、個人的な悲劇にも見舞われました。特に長女が自殺未遂を起こしたことが、彼にとって大きな痛手となりました。1971年にメキシコで亡くなるまで、アルベンスは自身の信念と思想について深く考え続けました。

名誉の回復

2011年、グアテマラ政府はアルベンスの名誉を回復し、公式に謝罪することを決定しました。公式な謝罪は同年10月に行われたものの、アメリカ側からの謝罪は未だ実現していません。

まとめ

ハコボ・アルベンス・グスマンの生涯は、グアテマラにおける民主主義的な改革の試みと、その背後にある国際政治の動きを反映しています。彼の改革は成功を収めた面がありながらも、外部の圧力との対立を生じ、最終的には失敗に終わりました。彼の存在は、今もなおグアテマラの歴史に大きな影響を残しています。

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