ハチク

ハチク（淡竹、甘竹）

ハチクは、中国を原産とするイネ科のタケ亜科に属する植物です。中国の黄河流域以南に広く分布し、日本ではモウソウチクやマダケと並び、三大有用竹として知られています。別名としてアワダケ、呉竹（くれたけ）とも呼ばれます。

生態

ハチクは多年生の常緑植物であり、直径は3〜10センチメートル、高さは10〜15メートルに成長します。節が二輪状になっているのが特徴で、この点で一輪状のモウソウチクと区別できます。マダケとの違いとしては、ハチクは全体的に色が白く、二本ある節の隆起線が低く黒っぽいことが挙げられます。

開花周期は約120年とされており、開花後には一斉に枯死することが知られています。日本での前回の開花は1900年頃で、1902〜1908年にかけて開花した記録が残っています。そのため、次回の開花は2020年頃と予想されていましたが、実際に2020年頃から各地で開花・枯死の報告が上がり始めました。

他の竹類と同様に、ハチクも開花後に枯れてしまう現象が見られますが、モウソウチクが開花すると地下茎まで枯れてしまうのに対し、ハチクは地上部分が枯死しても地下茎は枯れないことが多いとされています。広島大学の2023年の研究では、ハチクは開花後に種子をつけず、タケノコも出さず、竹林全体が枯死することが報告されており、その後の竹林の再生については今後の研究が待たれます。また、日本全国のハチクで開花周期が揃う理由として、遺伝的に均一であることが示唆されており、有用植物として同じハチクが全国に株分けされた可能性が考えられています。

利用

竹材として

ハチクはマダケに比べると強靭さは劣りますが、割り竹に適しています。特に茶筅の製造においては、竹材の先端を細かく分割する必要があるため、割り竹に適したハチクが重宝されます。その他、茶道用具の花器や竹箒としても利用されます。正倉院に収められている呉竹笙、呉竹竿、彫刻尺八、天平宝物の筆などもハチク製と鑑定されています。また、ハチクの内側の薄皮は竹紙と呼ばれ、笛の響孔に張ることで音の響きを良くする効果があります。

食用として

ハチクのタケノコは、えぐ味がなく美味であるとされていますが、市場に出回ることは多くありません。

漢方薬として

ハチクは漢方薬としても利用価値があります。稈（茎の部分）の内皮は竹筎・竹茹（チクジョ）、葉は竹葉（チクヨウ）と呼ばれ、生薬として用いられます。また、稈を炙ると流れ出る液汁は竹瀝（チクレキ）という生薬として利用されています。

脚注

石川の竹 - 八尾弥太郎著、北国出版社、1975年
図説　実用樹木学 (ISBN 4254470215) - 橋詰隼人、中田銀佐久、新里孝和、染郷正孝、滝川貞夫、内村悦三著、朝倉書店、1993年

関連項目

* 竹細工

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