ハットゥシリ3世

ハットゥシリ3世の生涯とその業績

王族としての始まり

ハットゥシリ3世は、紀元前1266年頃から紀元前1236年頃までヒッタイトの王として君臨しました。彼の父は大王ムルシリ2世であり、兄のムワタリの弟として生まれました。幼少期に健康上の問題を抱えていた彼は、父の意向でサムハの町の守護神であるシャウシュカ女神の神官として育てられ、彼の生涯を通してこの女神に対する信仰を深めました。王としての経験を積む中で、ハットゥシリは軍司令官や近衛隊長といった重職に就くこととなり、一族内で重要な役割を果たしました。

権力の取得と内政

ハットゥシリの人生の中で特に際立った出来事は、弟のムワタリが王位に就いた後に起こりました。ムワタリが王となった後、ハットゥシリはカデシュの戦いなどに従軍し、彼の戦闘能力とリーダーシップが認められました。しかしムワタリの死後、甥のムルシリ3世が王位を継承するも、その地位に不満を抱えた王族間の対立が表面化しました。ハットゥシリは当初、ムルシリ3世を支持していたものの、彼自身がネリク長官の地位を奪われたことから、王位を奪取することになるのです。

簒奪と新たな時代

ハットゥシリは王位を簒奪した理由として、ムルシリ3世が自身を排除しようとしたことを挙げています。彼は政権確立のために、親ムルシリ3世派のクルンタを利用し、巧妙に権力を拡大しました。彼の即位は神意に基づいていると主張し、王としての地位を正当化しました。しかし、彼の権力奪取に対する家族内の批判は根強く、息子トゥドハリヤでさえ父の行動に対して懐疑的でした。

エジプトとの平和条約

ハットゥシリ3世の治世で特に注目すべきは、エジプトとの平和条約の締結です。当時、アッシリアが急速に勢力を拡大していたため、ハットゥシリは戦略的判断を迫られました。彼はエジプトとの和平を図ることで、長きにわたり続いた対立からの脱却を目指しました。結果、紀元前1259年に彼とエジプトのファラオ・ラムセス2世の間で「エジプト・ヒッタイト平和条約」が成立しました。この条約には、国境線の確定や相互不可侵、共同防衛の取り決めが含まれており、当時としては画期的な合意でした。

地方外交と文化

ハットゥシリ3世の治世においては、外交も重要な役割を果たしました。彼はエジプトとの同盟を強化するため、自身の娘をラムセス2世に嫁がせることで関係を深化させました。また、彼の治世には、ハットゥシャの遺跡から200以上の外交文書が発見されており、それが彼の外交政策の活発さを物語っています。さらに、ハットゥシリとその妻プドゥヘパの摩崖碑文も残されており、ヒッタイトの文化における王妃の重要性を示しています。

死と後継者

ハットゥシリ3世はその後、息子トゥドハリヤに王位を譲り、彼の死後もヒッタイト帝国は続いていきました。ハットゥシリ3世の治世は、ヒッタイトの歴史において重要な時代として記録されており、彼の業績は後世に引き継がれることになります。このようにして、彼はヒッタイトの大王としての地位を確立したのでした。

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