ハッピー (ローリング・ストーンズの曲)

ローリング・ストーンズ「ハッピー」：キース・リチャーズの代表曲誕生秘話

ローリング・ストーンズの楽曲「ハッピー」(Happy)は、1972年に発表されたアルバム『メイン・ストリートのならず者』(Exile on Main St.)に収録されているロックナンバーです。作詞・作曲はミック・ジャガーとキース・リチャーズの共作ですが、大きな特徴として、キース・リチャーズがリードボーカルをとっている点が挙げられます。これは、リチャーズのボーカルの魅力が存分に出た、彼の代表曲の一つと言えるでしょう。

この曲のレコーディングは、他のストーンズメンバーが不在の中、リチャーズ、プロデューサーのジミー・ミラー、そしてサックス奏者のボビー・キーズの3人だけで行われました。リチャーズは当時、スタジオに「試したいアイディアがある」と、この曲を一気に録音。他のメンバーが到着する頃には、既に曲の大部分は完成していたと言われています。この出来事を、リチャーズは後に「他の連中を出し抜いたから嬉しくて、それで“ハッピー”ってタイトルにしたんだ」と語っています。このエピソードは、曲の誕生秘話として、ファンにはよく知られた逸話です。

「ハッピー」はアルバムからのシングルカットとして、1972年7月にリリースされました。B面には「オール・ダウン・ザ・ライン」(All Down the Line)が収録されています。このシングルは全米チャートで22位という好成績を収め、リチャーズのリードボーカル曲がシングルとしてリリースされた初めての事例となりました。これは、リチャーズのボーカリストとしての地位を確立する大きな一歩となったと言えるでしょう。

ライブパフォーマンスにおいても、「ハッピー」は長年に渡りローリング・ストーンズのレパートリーとして重要な位置を占めています。アルバム発表直後の北米ツアーから演奏されており、1980年代前半と、1997年から1998年のツアーを除き、ほぼ全てのツアーで披露されてきました。当初はミック・ジャガーと共に1本のマイクで歌われていましたが、1989年からはリチャーズのソロパートとして演奏されるようになり、ジャガーは休憩をとるようになりました。さらに、リチャーズのソロバンド、エクスペンシブ・ワイノーズ(The X-pensive Winos)のライブでも演奏されたこともあります。

ストーンズの公式ライブアルバムとしては、1977年の『ラヴ・ユー・ライブ』(Love You Live)に収録されています。また、映像作品としては、1974年のコンサート映画『レディース＆ジェントルマン』(Ladies and Gentlemen)に、1972年の北米ツアーでのライブ映像が収められています。この映像は2010年にDVD化され、多くのファンに目にする機会がもたらされました。さらに、2002年から2003年の「スティール・ホイールズ・ツアー」(Licks Tour)のライブテイクは、DVD『フォー・フリックス』(Four Flicks)に収録されています。

「ハッピー」は、ローリング・ストーンズの楽曲の中でも、特にキース・リチャーズの個性が強く表れている曲として有名です。レコーディング時のエピソード、チャートでの成功、そして長年に渡るライブパフォーマンスなど、この曲は多くのストーリーを秘めており、ストーンズの歴史において重要な位置を占める一曲と言えるでしょう。

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