ハナバチ

ハナバチとは

ハナバチとは、ハチ目ミツバチ上科に属する昆虫のうち、幼虫の餌として花粉や蜜を蓄える習性を持つものの総称です。英語では「Bee」と表現され、その種類は世界で約20,000種、日本国内でも400種以上が生息すると言われています。驚くべきことに、世界全体の種子植物の約80%は、ハナバチによって花粉媒介が行われています。

ハナバチの特徴

ハナバチは、花に訪れて蜜や花粉を集め、幼虫の餌とする習性を持つハチの仲間です。分類上は、ヒメハナバチ科、コハナバチ科、ハキリバチ科、ミツバチ科などに所属します。形態的な特徴としては、多くが小型から中型の丸みを帯びた体型をしています。

蜜を吸うための口吻も特徴的です。多くのハチが持つ中舌という器官が、ハナバチでは特に長く伸びており、花の奥から蜜を効率的に吸い上げることができます。また、体は細かく分岐した毛で覆われており、花粉が付着しやすくなっています。後肢や腹部には、花粉を集めて運搬するための特別な構造が発達している種類もいます。

ハナバチの生態

ハナバチは、花粉や蜜を自らの食糧とするだけでなく、幼虫の餌としても利用します。ミツバチやハリナシバチのように、大きな巣を作り社会生活を営むハナバチは、蜜を保存性の高い蜂蜜へと変化させて貯蔵します。

社会性昆虫として知られるミツバチの仲間でも、社会性を持つのはごく一部です。多くのハナバチは単独で生活し、母バチは巣の独房に花粉と蜜を練ったものを蓄え、卵を産み付けた後、巣を閉じてしまいます。コハナバチ科やヒメハナバチ科では、地下に巣穴を掘り、そこに幼虫の餌となる花粉と蜜を練り合わせたものと卵を納める部屋を作るものが多いです。ハキリバチ類は、植物の葉を切り抜いて巣材とし、地中に掘った巣穴や竹筒の中に詰め込みます。

マルハナバチ属になると、地下に巣を作り、女王蜂と働き蜂が分化した社会性を持ちます。ミツバチの社会性は、このような段階を経て、より大規模で高度に進化したと考えられています。

また、ハナバチの中には、他のハナバチの巣に卵を産み付け、餌を横取りする労働寄生を行う種類も存在します。

ハナバチは、紫外線を見ることができます。攻撃手段としては、マルハナバチやミツバチなど一部のハナバチは毒針を持ちますが、毒性は弱く、攻撃性も高くありません。ミツバチの一種であるトウヨウミツバチは、オオスズメバチを蜂球と呼ばれる塊で取り囲み、内部の温度を上昇させることで撃退します。針を持たないハリナシバチは、噛みつきで外敵に対応します。

ハナバチの一部は、0℃でも30℃以上の体温を維持できるという、恒温動物に近い特性を持つことが知られています。

人間とのかかわり

ハナバチは、花の受粉を行うため、農業上は益虫として扱われます。私たちが口にする食品の3分の1は、ハナバチが受粉媒介した農作物であると言われています。特にミツバチ、ツツハナバチ、ハキリバチ、マルハナバチなどは、受粉のために養蜂業者から農家へと販売されています。

ミツバチは、蜂蜜を採取するために飼育され始めましたが、現在では農業用の授粉用としての需要が大きくなっています。日本では、ビニルハウス栽培での受粉を目的として、ミツバチの導入が始まりました。リンゴ栽培では、人工授粉の負担軽減のためにミツバチが導入され、普及しました。

養蜂による産物としては、蜂蜜、巣蜜、蜜蝋などがあります。プロポリスやローヤルゼリーも、健康食品として利用されています。ハリナシバチも蜂蜜と蜜蝋を生産するため、ミツバチが存在しなかった地域ではよく利用されていました。

問題点

1990年代から、ミツバチが大量に失踪する蜂群崩壊症候群が発生し、個体数が大幅に減少しました。北米では、半数以上のハナバチが減少しており、4種に1種は絶滅の危機に瀕しています。

近年では、外来種が在来種や生態系に悪影響を与えることが懸念されています。例えば、セイヨウオオマルハナバチが在来のマルハナバチを減少させたり、セイヨウミツバチが在来ハナバチ相を壊滅させたりする事例が報告されています。アフリカミツバチは、生態系への悪影響だけでなく、その凶暴な性質からキラー・ビーとして恐れられています。

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