ハネカクシ

ハネカクシとは

ハネカクシは、コウチュウ目ハネカクシ上科ハネカクシ科に属する昆虫の総称です。その最大の特徴は、前翅が非常に短いことです。大きな後翅は、普段は小さく折りたたんで前翅の下に隠されており、これが「翅隠し」という名前の由来となっています。一見すると翅がないように見えるため、ハサミムシやアリなどと間違われることもあります。

多様性と生態

ハネカクシの仲間は非常に多様で、体長は1mmに満たないものから数cmに達するものまで様々です。種数も非常に多く、動物界全体で見てもゾウムシ科に次ぐほどです。しかし、その多様さにもかかわらず、研究は十分に進んでおらず、未発見の種も多く存在すると考えられています。

生息環境も多様で、草原や森林、湿地など、様々な場所に生息しています。海岸の潮間帯に住むものもいれば、アリやシロアリの巣に共生するものもいます。食性も多岐にわたり、肉食性のものが多く見られますが、植物遺骸、糞、藻類、菌類などを食べるものもいます。雑食性の強い種では、植物の生体組織を食べることもあります。

形態

多くのハネカクシは、上翅（鞘翅）が非常に小さく、腹部の大半が露出しています。後翅は機能的で、必要に応じて伸ばして飛翔します。飛翔時には体を立てて飛び、着地後には後翅を巧みに畳み込んで隠します。体色は黒っぽいものが多く、派手な色彩を持つものは多くありませんが、部分的に赤褐色や黄色、青緑色の金属光沢を持つものもいます。触角は通常11節で、糸状または数珠状ですが、種によっては棍棒状になるものもあります。

生態と行動

ハネカクシは、その多様な食性から、高等植物の生体組織以外はほとんど何でも食べると言われています。捕食行動も様々で、ハエに飛びかかるものや、口器を伸ばして獲物を捕らえるものもいます。また、一部の種では、子育て行動が見られます。例えば、キノコの中に産卵し、幼虫を保護する種や、巣穴に藻類を蓄えて幼虫の餌にする種などが知られています。

人間との関わり

ほとんどのハネカクシは、人間生活に直接的な影響を与えることはありません。しかし、アオバアリガタハネカクシは、体液に毒素を持っており、皮膚に付着すると炎症を引き起こすことがあります。また、オオツノハネカクシは、かつて塩田で害虫として扱われていましたが、現在では絶滅が危惧されています。一方で、ハダニの卵を捕食するハネカクシなど、害虫の生物的防除に利用しようとする試みもあります。

分類

ハネカクシ科は、非常に大きな分類群であり、その分類法は研究者によって異なります。一般的には、1科として4群に分け、さらに31亜科、約100族、約3200属に分類されます。日本では20亜科が知られており、その中には、かつて独立した科として扱われていたものも含まれています。しかし、分類法は未だ確定しておらず、今後の研究で変更される可能性もあります。

下位分類（一部）

ヨツメハネカクシ群
ヨツメハネカクシ亜科
ハバビロハネカクシ亜科
アリヅカムシ亜科
シリボソハネカクシ群
チビハネカクシ亜科
シリボソハネカクシ亜科
ホソヒゲハネカクシ亜科
ヒゲブトハネカクシ亜科
セスジハネカクシ群
オサシデムシモドキ亜科
デオキノコムシ亜科
ヒラタハネカクシ亜科
ツツハネカクシ亜科
セスジハネカクシ亜科
ハネカクシ群
オオキバハネカクシ亜科
メダカオオキバハネカクシ亜科
メダカハネカクシ亜科
チビフトハネカクシ亜科
スジヒラタハネカクシ亜科
アリガタハネカクシ亜科
* ハネカクシ亜科


ハネカクシは、その多様性とユニークな生態から、非常に興味深い研究対象です。未解明な部分も多く、今後の研究によって、新たな発見が期待されます。

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