ハブダンパー

ハブダンパー：オートバイの快適性と耐久性を支える小さな巨人

はじめに

オートバイのリアホイールハブに組み込まれたダンパー、それがハブダンパー（Hub Damper）です。英語圏ではCush drive（クッシュドライブ）とも呼ばれ、多くのオートバイやスクーターに搭載されています。一見すると目立たない部品ですが、その役割は大きく、ライダーの快適性と車両の耐久性を両立させる上で重要な役割を担っています。

ハブダンパーの機能

ハブダンパーは、リアスプロケットから伝わるトルクを吸収・緩衝する役割を担います。変速時や加速・減速時の衝撃を和らげ、ドライブトレインにかかる負担を軽減します。具体的には以下の効果があります。

変速時の衝撃吸収: クラッチミート時のショックを吸収し、スムーズな変速を実現します。
駆動系の保護: カムチェーンの伸びを抑制し、トランスミッションやドライブチェーンの耐久性を向上させます。エンジンブレーキによるトルク変動も吸収し、エンジンへの負担を軽減します。
* 乗り心地の向上: 変速時のショックや振動を減衰させ、ライダーにとってより快適な走行を実現します。いわゆる「ギヤ打ち音」の軽減にも貢献します。

ハブダンパーの構造

ハブダンパーは、ゴムやエラストマー、ばねなどの弾性材料で作られています。その形状は車種によって異なり、ハブ内部に円弧状の溝を設け、そこにダンパーを挿入するタイプや、ハブ周囲に円柱状の穴を設け、パイプ状のダンパーを挿入するタイプなどがあります。

例えば、ゴムやエラストマー製のハブダンパーは、経年劣化により硬化・収縮・亀裂などが発生しやすく、劣化が進むとガタツキやトルク変動の原因となります。そのため、定期的な交換が必要です。

ハブダンパーの歴史

ハブダンパーは、1912年、ロイヤルエンフィールド製のサイドカーに採用されたのが始まりと言われています。当初は、サイドカーの重量による大きなバックトルクから駆動系を守るために用いられました。ロイヤルエンフィールドが“Cush drive”という商標名で用いたことから、英語圏ではこれが一般名詞として定着しました。

ハブダンパーを採用しない場合

ハブダンパーは、駆動系の衝撃やストレスを軽減する一方で、駆動力の損失が多少発生します。そのため、モータースポーツ車両など、強烈な瞬発力を求める車両では採用されない場合があります。また、車重が軽く、トルクが大きくない車両では、駆動系のストレスが小さいため、ハブダンパーが不要な場合があります。ホンダNSR50や、初期のヤマハセロー225などがその例です。セロー225では、後のモデルでハブダンパーが採用されましたが、一部ユーザーはダンパーレスの仕様を好む傾向もありました。

まとめ

ハブダンパーは、オートバイの快適性と耐久性を向上させる上で重要な部品です。その構造や機能、歴史、そして採用例・非採用例を理解することで、オートバイのメカニズムへの理解を深めることができます。目立たない部品だからこそ、その存在意義と役割を再認識することが重要です。

付記

ハブダンパーに関する画像は、Wikimedia Commonsには現状存在しないため、Google画像検索などを利用して参照ください。また、楽天などのショッピングサイトでも、様々なハブダンパーの写真を見ることができます。

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