ハプログループC1 (Y染色体)

分子人類学におけるY染色体ハプログループの分類において、ハプログループC-F3393は、主要な系統であるハプログループCから分岐した下位系統の一つです。この系統は、遺伝子マーカー「C-F3393」の変異によって特徴づけられ、人類の父系を追跡する研究に用いられます。

ハプログループC-F3393は、さらに複数の主要な下位系統に分岐しています。その中でも代表的なものがC1a（C-CTS11043）とC1b（C-F1370）です。

まず、C1a系統は、遺伝子マーカーC-CTS11043によって定義され、主に二つの主要な枝に分かれます。一つはC1a1（C-M8）で、これは主に東アジア地域、特に日本、中国、韓国、朝鮮といった国々で比較的多く確認される系統です。もう一つはC1a2（C-V20/V184）で、こちらは主にヨーロッパに見られますが、アルジェリア、アルメニア人、ネパールといった地域でも少量ながらその存在が確認されています。ヨーロッパにおけるC1a2系統は、この大陸の最古層に位置する集団、例えばクロマニョン人と関連付けられる可能性が指摘されており、ヨーロッパにおける人類の歴史を考える上で興味深い系統の一つとされています。

C1a2系統はさらに細かく分かれており、例えばC1a2a（C-V182）やC1a2b（C-Z38888）といった下位系統が存在します。C1a2aからはC1a2a1（C-V222）やC1a2a2（C-Y11325/Z29329）などの系統が分岐しており、それぞれ英国（エセックス、スコットランド、北アイルランドの一部）、イタリア（カラブリア州クロトーネ県）、ギリシャ、ハンガリー、ウクライナ（リヴィウ州）や、スペイン（バレンシア州カステリョン県）、ポーランド（ポトカルパチェ県）といった特定の地域で確認されています。一方、C1a2bはアルジェリアやアルメニア人に見られます。

次に、C1b系統は遺伝子マーカーC-F1370によって定義され、これもまたいくつかの重要な下位系統に分かれます。その一つであるC1b1系統からは、C1b1a系統などが分岐しています。C1b1a1（C-M356）は、南アジア、中央アジア、西アジアといった広範な地域で比較的少ない頻度ながら確認される系統です。また、その下位のC1b1a1b（C-Z16582）は、サウジアラビアやイラクで確認されています。C1b1a2（C-B65）は、中国（陝西省、湖南省、広東省など）をはじめ、シンガポールのマレー人、ボルネオ島のムルット族やレボ族、フィリピンのアエタ族など、東アジアから東南アジアにかけての様々な民族集団で比較的少量ながら確認される多様な分布を示す系統です。さらに、C1b1b（C-B68）は、ブルネイのドゥスン族で確認されています。

C1b系統のもう一つの主要な枝はC1b2（C-B477）で、これは特にオセアニア地域に特徴的に見られる系統群です。C1b2はさらにC1b2a（C-M38）とC1b2b（C-M347）に分かれます。C1b2a系統は、パプアニューギニアの先住民やオセアニアの広範な島嶼地域に分布しており、この地域の初期の入植や集団形成に関連する系統と考えられています。C1b2b系統は、オーストラリアの先住民に広く分布しており、オーストラリア大陸における独自の集団史を反映している系統です。

このように、ハプログループC-F3393とその下位系統は、東アジア、ヨーロッパ、南アジア、西アジア、中央アジア、東南アジア、そしてオセアニアと、旧世界からオセアニアにかけての広範な地域に分布しており、人類の拡散や各地域での集団の歴史を解明するための重要な手がかりを提供しています。

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