ハプログループE (Y染色体)

Y染色体ハプログループE：アフリカを起源とする遺伝子系統

Y染色体ハプログループEは、分子人類学において用いられる人類のY染色体の遺伝子系統分類の一つです。ハプログループDEのサブクレードであり、特定の遺伝子変異（L339, L614, M40/SRY4064/SRY8299, M96, P29, 他多数）によって定義されます。最新の研究によると、約7万3千年前、東アフリカまたは西アジアで誕生したと推定されています。

ハプログループEの主要な下位系統と分布

ハプログループEは、複数の主要な下位系統に枝分かれしています。それぞれの系統は、地理的な分布や関連する民族集団に特徴的なパターンを示します。主な系統と特徴を以下にまとめます。

E1a (M132): 西アフリカの一部民族で高頻度に見られます。
E1b (P177/PF1939): アフリカ大陸に広く分布し、複数のサブクレードに細分化されています。
E1b1a (L222.1/S350.1, 他): アフリカ中南部に多く見られ、ニジェール・コンゴ語族との関連性が指摘されています。約68%のニジェール・コンゴ語族に観察されると言われています。
E1b1b (M215/Page40/PF1942): アフリカ北東部に多く、アフロ・アジア語族との関連性が示唆されています。特にベルベル人においては80～93%の高い頻度を示します。ナイル・サハラ語族の一部民族にも高頻度に見られます。この系統は、地中海沿岸地域やヨーロッパにも拡散しており、特にアルバニアではE1b1b1a1b1-V13系統が高頻度です。これは、有史以前のある時期にエジプト付近からヨーロッパへの移動があった可能性を示唆しています。ヨーロッパで見られるE系統の大部分は、このE-V13系統またはE-M123系統です。チャド語派の母語話者の多くがR1b系統であることから、チャド語派の本来の担い手は、カメルーン北部に低頻度で見られるE-V259系統であると考えられています。
* E2 (M75): 東アフリカに分布しています。

ハプログループE系統の更なる詳細

E1b1b系統は特に多様なサブクレードを持ち、その地理的分布と民族集団との関連は複雑です。例えば、E1b1b1a1b1-V13系統はアルバニアで高頻度に見られる一方、E1b1b1b1系統はベルベル人に多く、E1b1b1b2a1-M34系統はセム語話者に広く分布しています。これらの分布パターンは、過去の集団移動や遺伝子交流の歴史を反映していると考えられます。

アフリカ大陸内でのハプログループE系統の分布は多様であり、それぞれの系統の出現時期や拡散経路を解明するためには、さらなる研究が必要です。また、E系統の地理的分布と言語系統、文化との関係性についても、より詳細な調査が求められます。

まとめ

ハプログループEは、アフリカを起源とする重要なY染色体ハプログループであり、その下位系統はアフリカ大陸内外に広く分布しています。それぞれの系統の分布と関連民族、言語集団を分析することで、人類の移動と遺伝的多様性の歴史をより深く理解することができます。今後の研究によって、ハプログループEの起源や拡散に関する知見がさらに深まることが期待されます。

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