ハマ (王妃)

ハマ：新アッシリア帝国の王妃

ハマ（アッカド語: Ḫamâ）は、新アッシリア帝国の王妃であり、シャルマネセル4世（在位：前783年-前773年）の正妃でした。彼女に関する情報は非常に限られており、その生涯は謎に包まれています。しかし、1988年に発見され、2017年にハマのものと特定された遺骨と副葬品の研究から、彼女の人物像と当時の王室の生活様式が少しずつ明らかになってきました。

生涯

ハマという名前は、当時のアッシリアでは珍しいものであったようです。彼女の墓以外にハマの名を特定できる史料は存在しません。遺骨の分析から、彼女は3歳から6歳の間に深刻な外傷または病を経験したことが示唆されています。また、彼女は小柄で、身長は約157.5センチメートルでした。歯肉炎や慢性副鼻腔炎など、いくつかの健康上の問題を抱えていましたが、これらは当時のメソポタミアでは一般的なものでした。

ハマはシャルマネセル4世が王になる前に結婚していたと考えられています。彼女はニムルドの北西宮殿で生活し、夫の治世中またはその直後に18歳から20歳という若さで亡くなりました。死因は不明です。

当時の新アッシリア帝国は衰退期に向かっており、高官たちの力が王よりも強大化し、敵国も勢力を増していました。ハマに関する史料が少ないことや、王妃を名前ではなく称号で呼ぶことが一般的であったため、彼女の生涯についての歴史的情報は限られています。彼女の名前が確認できる史料は、前779年の法的文書のみです。

埋葬と遺産

ハマはニムルドの北西宮殿内に、他の王妃たちと共に埋葬されました。彼女の棺は青銅製で、黄金の王冠やネックレス、ブレスレットなど、豪華な副葬品が多数納められていました。特に注目されるのは、彼女の印章で「アッシリア王シャルマネセルの王妃、アダド・ニラリの義娘、ハマのもの」と刻まれています。この印章には、ハマが女神に拝礼する様子が描かれています。

彼女の埋葬は、急な死によって準備が十分にできなかったことを示唆しています。通常とは異なる副葬品や、棺の位置などがその証拠とされています。

現代の研究

ハマの墓は1980年代後半に発見されましたが、湾岸戦争の影響で研究は遅れました。2017年、歴史学者トレーシー・L・スパリアーが、棺の内容物に関する以前の報告を相互参照し、考古学的、骨格的、文書的な研究を行った結果、ハマの棺であると特定しました。彼女の研究は、これまで注目されていなかったペンダントの重要性を明らかにし、他の副葬品や墓の配置から、遺骨がハマのものであるという見解を強化しました。

しかし、2015年にISILによって北西宮殿が破壊され、ハマの遺骨と副葬品の状態は不明となっています。スパリアーによれば、遺骨は1990年代にイラク博物館で保管されていたことが最後に報告されています。

ハマの生涯は謎に包まれていますが、彼女の墓から発見された豪華な副葬品は、彼女が王妃として重要な地位にあり、当時の王室が豊かな生活を送っていたことを物語っています。彼女の研究は、古代アッシリアの歴史と文化を理解する上で貴重な貢献となっています。

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