ハワイにおける日本人移民

ハワイへの日本人移民の歴史

19世紀後半、ハワイはサトウキビ産業の隆盛に伴い、労働力不足に悩まされていました。そこで、1868年以降、日本から多くの人々が労働者としてハワイへと渡りました。この移民の波は、ハワイ社会の構造を大きく変えることになります。

移民の背景

ハワイ王国は、19世紀初頭から欧米文化の影響を強く受けるようになりました。特にサトウキビの輸出が奨励され、大規模農園が次々と設立されました。しかし、ハワイ人だけでは労働力を確保できず、海外からの労働力が必要とされました。当初は中国人が多く移住しましたが、定着率が悪く、ハワイ政府は日本人労働者に目をつけました。1898年にハワイがアメリカに併合されると、中国人移民は制限され、日本人移民がさらに増加しました。

移民の流れ

元年者（がんねんもの）

1868年、最初の日本人移民団が「サイオト号」でハワイに到着しました。彼らは「元年者」と呼ばれ、契約内容と実際の労働環境の乖離に苦しみましたが、中にはハワイ社会で成功を収め、後世に語り継がれる人々もいました。この事件をきっかけに、日本とハワイの間で通商条約が結ばれ、正式な移民が開始されることになります。

契約移民

1886年、日布移民条約が締結され、政府が斡旋する官約移民が始まりました。多くの日本人が「3年間で400万円稼げる」という宣伝に惹かれてハワイに渡りましたが、実際には過酷な労働条件と虐待に苦しみました。1日10時間の労働、週1日の休み、低賃金、そして「主人と召使法」により契約期間中の離職は許されないという状況でした。契約移民制度は、ハワイ総領事ロバート・W・アーウィンの仲介によって行われましたが、1894年に仲介料の問題で廃止されました。

民間移民会社

1894年以降は、民間移民会社による私約移民が行われるようになりました。多くの会社が設立され、特に広島海外渡航会社、森岡商会、熊本移民会社、東京移民会社、日本移民会社は「五大移民会社」と呼ばれました。しかし、日本人移民の増加は、アメリカ人農園経営者たちの警戒心を招き、労働者同士の対立を煽るために、韓国人移民も導入されました。また、より良い賃金を求めてカリフォルニアへ移住する人も現れました。1898年のハワイ併合と、1908年の日米紳士協約により、移民会社は消滅し、日本人移民は一時帰国を余儀なくされました。そして、1924年の移民法により、日本人移民は事実上不可能となりました。

その後

多くの日本人移民はハワイに定住し、日系アメリカ人としてハワイ社会の基礎を築き上げました。第二次世界大戦中は、アメリカ本土の日系人が強制収容されましたが、ハワイでは日系人の数が多く、経済への影響が大きいため、一部の人々のみが収容されました。近年、ハワイへの日本人移民は再び増加傾向にあります。

ストライキ

農奴のような過酷な労働条件の中、日本人移民は度々ストライキを起こしました。1900年以前に数百件のストライキが起こりましたが、当時はストライキが違法とされ、待遇改善には至りませんでした。しかし、1900年のハワイ併合後、労働条件が緩和され、ストライキの件数は減少しました。1908年には、法学者の根来源之が労働条件の改善を主張し、増給運動が展開されました。1909年には、オアフ島各地で大規模なストライキが起こりましたが、経営者側の徹底した弾圧により失敗に終わりました。しかし、経営者側も労働環境の見直しを余儀なくされ、若干の増給が実施されました。1920年には、ハワイ史上最大のストライキが起こり、労働者の賃上げと労働環境の改善を勝ち取りましたが、製糖産業における日本人労働者の割合は激減しました。このストライキは、後の排日運動を加速させる一因となりました。

ハワイの日本語

ハワイの日系社会では、広島県出身者が多数を占め、その方言が「共通語」として使われました。ハワイにやってきた人々は、広島・山口方言を学ぶ必要があったとされています。沖縄県出身者は、本土出身者とは異なるコミュニティを形成しました。

日本人移民と宗教

ハワイでは、キリスト教が主流でしたが、日本人移民によって仏教、儒教、道教、神道などが持ち込まれ、特に仏教が発展しました。これらの宗教は、年中行事や冠婚葬祭、日本語学校、寺子屋などの活動を通じて、日系社会のコミュニティ形成に大きく貢献しました。


ハワイへの日本人移民の歴史は、苦難と希望が入り混じったものでした。彼らが築いた日系社会は、現在もハワイ文化の一部として色濃く残っています。

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