ハンブルクSバーン

ハンブルク Sバーン

ハンブルク Sバーンは、ドイツ北部の主要都市ハンブルクとその周辺地域を結ぶ都市高速鉄道網です。このSバーンは、Uバーン（地下鉄）やAKN鉄道など、ハンブルク都市圏における他の重要な公共鉄道路線と連携し、市民や訪問者の円滑な移動を支えています。

現在の運行は、ドイツ鉄道（DB）グループの子会社であるハンブルク Sバーン社が行っており、DBレギオノルトがその運行責任を担っています。運営には約1,400名の従業員が携わっています。かつては他のドイツの主要都市のSバーンとは異なる、赤を基調とした独自のシンボルマークが使用されていた時期もありました。

歴史

ハンブルクにおける都市高速鉄道の起源は、1906年にプロイセン邦有鉄道によってハンブルクとアルトナを結ぶ近郊路線として始まりました。当初は蒸気機関車が客車を牽引していましたが、開業からわずか1年後の1907年10月には電化が実現し、電車運転が開始されました。

「Sバーン」という呼称は、1930年にベルリンで都市高速鉄道網を指す言葉として生まれましたが、ハンブルクでもドイツ帝国鉄道により1934年から公式に使用されるようになります。これは、都市交通としての性格をより明確にするものでした。

電化方式については、当初の交流電化から転換が図られました。1930年代、加速度向上などを目指し、ベルリン Sバーンと同様の第三軌条式直流電化への切り替えが決定。電圧はベルリンの750Vに対し1200Vが採用され、両都市の車両に互換性はありません。最初の直流電車（後の471形）は1939年に導入され、1940年 7月から本格運用が始まりましたが、旧来の交流電車も1955年まで併用されました。

第二次大戦後、1950年代から1960年代にかけて、ハンブルク Sバーンの路線網は郊外へと着実に拡大していきます。1965年にハンブルク運輸連合（HVV）が設立されると、Sバーンは他の公共交通機関と統合された運賃・運行体系の中で運営されるようになり、利便性が向上。1967年からはS1からS6（現在はS1, S2, S3, S5）までの系統番号が整備されました。1970年代から1980年代にかけては、中心部を地下で貫通する「City-Sバーン」区間やさらなる郊外への延伸が進み、現在の路線網の基盤が築かれました。

近年の主要な進展として、2007年のS3系統のシュターデ方面への延伸が挙げられます。この区間では、従来の直流第三軌条方式に加え、交流15000V架空電車線方式が採用されたため、両方式に対応可能な複電圧車両（474形の一部）が投入されました。2008年にはハンブルク空港へのアクセス路線も開業し、市内中心部との連絡が強化されています。また、2001年まで都市鉄道としては珍しい2クラス制（1等車・2等車）が残されていた点も特徴です。

路線網

現在、ハンブルク Sバーンは主に以下の4つの系統（S1、S2、S3、S5）で運行されています。

全系統がハンブルク中央駅を経由しますが、中心部における走行ルートが異なります。S1系統とS3系統は中心部の地下区間（City-Sバーン）を通り、S2系統とS5系統は地上のVerbindungsbahn（連絡線）を経由します。

主要な系統は以下の通りです。

S1: ヴェーデル方面からアルトナを経て地下区間を通り、中央駅よりポッペンビュッテル方面とハンブルク空港方面へ分岐します。
S2: アルトナから地上連絡線を経由し中央駅を経て、ベルゲドルフ、アウミューレ方面へ向かいます。
S3: ピンネベルク方面からエルブガウ通り、アルトナを経て地下区間を通り、中央駅を経てハールブルク、ノイグラーベン方面へ向かいます。
S5: エルブガウ通りから地上連絡線を経由し中央駅を経て、ハールブルク、ノイグラーベン、さらに交流電化区間を通りシュターデまで運行します。

使用車両

ハンブルク Sバーンで使用される電車は、基本的に3両1編成を単位とし、これを連結して6両編成や最大9両編成で運転されます。

電化方式の違いに対応するため、対応車両が使い分けられています。大半の区間は直流1200V第三軌条方式ですが、S5系統の一部区間など、交流15000V架空電車線方式が採用されている区間では、両方式に対応した複電圧車両が使用されます。

現在運用されている主な車両形式は以下の通りです。

474形: 1996年以降に製造された形式で、S1、S2、S5系統を中心に運用。複電圧対応車は474.3形として区別され、中間車にパンタグラフを持ちます。
490形: 2013年以降に製造された新しい形式で、主にS3、S5系統で活躍しています。

過去には、470形、471形、472形といった形式も使用されていました。車両の塗装は、かつてのベージュとマリンブルーから、現在はドイツ国内で標準的な「交通赤色」に順次変更されています。

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