ハンマーロック

ハンマーロック（腕挫召捕）について

ハンマーロック、別名「腕挫召捕（うでくじきめしとり）」は、格闘技や逮捕術において重要な技術の一つです。主にレスリング、プロレス、総合格闘技といった競技や、警察官による逮捕術で活用されます。

概要と技術内容

この技術の起源は、古いグラップリングスタイルであるキャッチ・アズ・キャッチ・キャンにさかのぼると言われています。基本的な構造は、相手の片腕を背中側に引き上げ、関節部分を捻り上げることで、主に相手の腕関節や肩関節に強い負荷をかけ、制圧または関節を極めるものです。アームロックの多様なバリエーションの一つと見なされています。

両手を使って相手の腕を背中に回し、自らの腕や手で相手の腕をてこのように押し上げるようにして極める形は、「バーハンマーロック」と呼ばれることもあります。

柔道技との関連性

柔道には、似た構造を持つ「腕緘（うでがらみ）」や「腕挫手固（うでひしぎかため）」といった技があります。ハンマーロックは、腕で相手の腕と肩関節を極めるという点で、腕緘に含まれる「チキンウィング・アームロック」に類似しています。

しかし、ハンマーロックはチキンウィング・アームロックとは異なり、片手でもう一方の自分の手首を掴んで固定するような組み方や、両腕で相手の腕を「4の字」の形（フィギュア・フォー）に組むことはしません。そのため、柔道においては「腕挫手固」に分類されるのが一般的です。

片手のみで相手の腕を固定し、もう片方の手でハーフネルソン、フェイスロック、あるいはクレイドルといった他のコントロール技と複合させて使用することも可能です。また、腕挫腋固（うでひしぎわきがため）やリストロック（手首固め）といった他の関節技へのスムーズな移行や連携が容易であるという特徴もあります。リストロックと同時に極める場合は、「ダブルバーハンマーロック」とも称されることがあります。

危険性と注意点

ハンマーロックは、適切に極まると相手の関節に非常に強い負担をかけるため、危険を伴う技でもあります。無理に耐え続けると、肩関節の脱臼や腕の骨折といった重傷につながる可能性があります。したがって、練習や指導においては、安全に十分配慮することが不可欠です。

使用される場面

この技は、立ち技の状態から仕掛けることもできれば、寝技の状態でも使用可能です。競技によってはその扱いが異なります。

例えば、アマチュアレスリングにおいては、関節技としての使用は禁止されています。一方、サンボという格闘技でもハンマーロックは禁止技とされています。

プロ格闘技においては、実戦での使用例も複数あります。柔道の世界大会では、腕挫手固としてのハンマーロックによる一本勝ちが記録されており、2015年の世界柔道選手権や2018年の柔道グランドスラム・パリで日本の田代未来選手や韓国のイ・スンス選手がこの技で勝利を収めています。また、総合格闘技イベントRIZIN.14では、宮田和幸選手がガードポジションからのハンマーロックで勝利しています。

特撮テレビドラマ『海賊戦隊ゴーカイジャー』においては、敵キャラクターの必殺技としても登場したことがあります。

逮捕術におけるハンマーロック

ハンマーロックは、逮捕術においても非常に重要な拘束技術の一つとして活用されています。逮捕時に抵抗する被疑者の動きを効果的に封じ込めるために用いられます。

警察官が被疑者に手錠をかける際、相手が抵抗する場合には、まずハンマーロックで相手の腕をコントロールし、後ろ手にしてからスムーズに手錠を装着するといった応用的な使い方がなされています。これは、被疑者の安全を確保しつつ、迅速かつ安全に拘束を行うための有効な手段とされています。

参考文献

格闘技や逮捕術におけるハンマーロックに関する記述は、古くはマーティン・バーンズの著作や、現代のスポーツ教育プログラムの教材などに見られます。インターネット上でも、フランク・ゴッチ、ジョージ・ハッケンシュミットといった伝説的なグラップラーたちが教えたハンマーロックに関する資料が公開されています。

もう一度検索