ハーバート・メンゲス

ハーバート・メンゲス：イギリスを代表する指揮者、作曲家

ハーバート・メンゲス (1902年8月27日 - 1972年2月20日) は、20世紀イギリスを代表する指揮者、作曲家です。イングランド南部のホヴで、音楽一家に生まれました。父はドイツ人、母はイギリス人のヴァイオリニストで、幼少期から音楽に囲まれた環境で育ちました。4歳からヴァイオリンを始めましたが、ピアノや作曲にも強い関心を抱き、才能を開花させていきます。

メンゲスは王立音楽大学で学び、著名な作曲家であるレイフ・ヴォーン・ウィリアムズやグスターヴ・ホルストといった巨匠から指導を受けました。さらに、マチルデ・ヴェルヌやアルテュール・デ・グレーフといった音楽家からも薫陶を受け、幅広い音楽的素養を身につけました。

彼のキャリアは、指揮者として華々しく幕を開けます。1925年、母親が設立したブライトン・シンフォニー・プレイヤーズ（後にブライトン・フィルハーモニー管弦楽団と改称）の指揮者となり、以後、終生に渡って同楽団の常任指揮者として活躍しました。その手腕は高く評価され、長きに渡って楽団を支え、発展に大きく貢献しました。

指揮活動と並行して、メンゲスは劇場音楽にも深く関わりました。1931年から1950年まで、オールド・ヴィック・シアターの音楽監督を務め、数々の劇作品の付随音楽の作編曲、指揮を担いました。さらに、同時期にはロンドンのロイヤルティ・シアターの音楽監督も兼任するなど、精力的に活動しました。音楽教育にも熱心で、若手音楽家の育成を目的としたロンドン・リハーサル管弦楽団を創設するなど、多岐に渡る活動を展開しました。

作曲家としてのメンゲスは、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『アントニーとクレオパトラ』の付随音楽で広く知られています。この作品は、ローレンス・オリヴィエとヴィヴィアン・リーという豪華なキャストを迎え、1951年にブロードウェイでミュージカルとして上演され、大きな成功を収めました。シェイクスピアの劇の世界観を見事に音楽で表現した、彼の才能が遺憾なく発揮された作品と言えます。

音楽への貢献が認められ、1963年にはOBE（Officer of the Order of the British Empire）を受勲しました。これは、イギリスにおける功績に対して与えられる栄誉ある称号です。

メンゲスは、1972年、ロンドンでその生涯を閉じました。しかし、彼の残した音楽作品や、指揮者としての功績は、現代においても高く評価されており、多くの音楽愛好家から敬愛されています。彼の息子であるクリス・メンゲスは映画制作者として活躍しており、芸術一家としての血脈を受け継いでいます。姉にはヴァイオリン奏者のイゾルデ・メンゲスがいます。

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