ハーリド・アスアド

ハーリド・アスアドの生涯と業績

ハーリド・アスアド（1934年 - 2015年8月18日）は、シリアの考古学者であり、古代アラム語に関する研究を行ったことで知られています。彼は特にパルミラの遺跡における重要な調査を通じて、考古学の世界で特別な地位を築き上げました。彼はエジプトのツタンカーメンの墓を発見したハワード・カーターと並ぶ重要な考古学者の一人として認識されています。また、ビザンチン時代の共同墓地の発掘など、彼の業績は多岐にわたります。

経歴

アスアドはシリアのパルミラで生まれ、ダマスカス大学で歴史学を専攻しました。しかし、考古学の分野は独学で学んだといいます。1963年から2003年までの約40年間、彼はパルミラ博物館の責任者として活動し、退職後も専門委員として研究を続けました。2001年にはサーサーン朝時代の銀貨700枚を発見したことが報告され、2003年には70平方メートルのモザイクを発掘しました。

アスアドは国際的な研究チームと連携し、アメリカ、ポーランド、ドイツ、フランス、スイスなど多くの国で共同研究を行いました。彼の努力はパルミラの文化遺産保存に大きく貢献し、その業績から「ミスター・パルミラ」という称号を得ることとなりました。

ISILによる殺害と反響

2015年にシリアで激化した内戦の中、アスアドはISILに一カ月以上拘束され、隠された遺品の場所を告げるよう強要されましたが、その要求を頑なに拒否しました。彼は最終的に公開処刑され、その遺体はローマ時代の柱に吊るされました。ニューヨーク・タイムズによると、彼の遺体には「パルミラ偶像崇拝の指導者」とのプラカードが掲げられ、彼自身の名誉が傷つけられる形で示されました。

アスアドは1954年にバアス党に参加していたものの、彼がバッシャール・アル＝アサドの直接的な協力者であった証拠はなく、英エコノミストによれば彼はその忠実な支持者であったとのことです。著名な歴史学者で執筆家のトム・ホランドは、アスアドを「単なる殉職者ではなく英雄だ」と評価しました。

シリア遺跡管理当局の局長であるマムーン・アブドルカリムは、ISILの行動を「パルミラにおける呪いと悪い前兆」と表現しました。また、イタリアの文化大臣ダリオ・フランチェスキーニは、アスアドに敬意を表し、すべての美術館と文化団体で哀悼の印を掲げることを発表しました。さらに、ユネスコの事務局長イリナ・ボコヴァは、彼の死を非難し、アスアドの考古学者としての業績を称賛しています。

彼の殺害に関する反響は広がり、アメリカ国務省も文化財の保存に命を捧げた彼の行いを強く非難しました。アスアドは、彼の努力によって失われた数多くの遺物を守り、古代の文化を現代に伝える役割を果たしました。

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