ハ5 (エンジン)

ハ5エンジンの概要

ハ5は1930年代に中島飛行機によって設計された、複列14シリンダーの空冷星型レシプロエンジンです。このエンジンは大日本帝国陸軍によって採用され、ハ5の名前で呼ばれました。最初は爆撃機に用いられましたが、後に性能向上型としてハ41とハ109が開発され、戦闘機でも使用されました。ここでは、ハ5の開発の背景、設計の特徴、そして実際に搭載された航空機について解説します。

開発の背景

中島飛行機は1928年から空冷星型エンジンの開発に着手しました。最初の成功はブリストル製のジュピターのライセンス生産から始まり、それに続いて単列9シリンダーの寿（ハ1）や、ハ8など複数のエンジンを世に送り出しました。当時、航空機用エンジンは単列から複列への移行が進んでいる最中であり、中島でもこの流れに合わせて複列化を図ることとなりました。

1933年には試作型のハ5が完成し、その基本設計や性能は量産型にも影響を与えました。この試作型は複列14シリンダーで、排気量は37.5Lでしたが、特筆すべき点はエンジンの構造で、開発にあたって設計に余裕を持たせるための工夫が行われました。

設計の特徴

ハ5エンジンの設計は、前列と後列に分かれたバルブ開閉用のプッシュロッド、カム配置を採用することで、十分な冷却フィンのサイズを確保し、剛性や耐久強度を向上させることに成功しました。これにより、エンジン全体の堅牢性が増し、更なる性能向上が期待できる設計となりました。この設計による変革は、ハ5から派生した栄エンジンなど、他の中島開発の複列空冷星型エンジンにも受け継がれています。

陸軍での採用と展開

ハ5はまず、陸軍次世代爆撃機のエンジンとして試験され、1936年にはキ19とキ21という機体に搭載されることとなりました。この際、キ21にはハ5エンジンが選ばれました。ハ5はその性能から、比較的大型で強力なエンジンとして位置づけられ、特に九七式重爆撃機や九七式軽爆撃機に搭載されました。

発展型であるハ41（離昇出力1,260HP）やハ109（離昇出力1,500HP）も、旋回性を重視せず速度と火力を重視した重戦闘機に搭載され、次第に戦局で重要な役割を果たしました。これらのエンジンは共に中島および三菱重工業で生産され、その累計生産数は7,331基を超えます。

主要諸元

ハ5の基本的な特性には以下のようなものがあります：

• - タイプ: 空冷星型複列14シリンダー
• - ボア×ストローク: 146mm×160mm
• - 排気量: 37.5L
• - 乾燥重量: 625kg
• - 圧縮比: 6.7
• - 過給: 遠心式スーパーチャージャー1段1速

また、その主な搭載機は九七式重爆撃機と九七式軽爆撃機です。

このようにハ5エンジンは、その設計と性能の両面から、陸軍航空機において重要な役割を果たしました。その後の中島飛行機のエンジン開発にも大きな影響を与えたエンジンと言えるでしょう。

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