ハ9 (エンジン)

ハ9エンジンについての詳細

ハ9エンジンは、1930年代後半に川崎航空機によって製造された航空機用の水冷・液冷V型12気筒エンジンです。主に日本陸軍で使用され、海軍名称は存在しません。このエンジンは、ドイツのBMW VIを基にしており、その技術をライセンス生産として国内で改良が施されました。

ハ9の概要

ハ9は、川崎航空機がドイツBMW社の液冷V型12気筒エンジンであるBMW VIを基に製造したもので、改良を重ねることにより出力を向上させてきたエンジンの最終型です。BMW VIは1920年代後半から30年代前半にかけてのドイツの主要航空エンジンの一つであり、BMW IV（水冷直列6気筒）を基にしてその気筒数を倍にした設計となっています。

1927年には日本でもBMW VIがライセンス生産され、国産化が成功しました。このエンジンは「べ式四五〇馬力発動機」という名称で、陸軍制式名称として用いられました。BMW-6はその後も川崎によって改良が行われ、結果として「べ式五〇〇馬力発動機」へと進化しました。これには一型（BMW-6改）と二型（BMW-7）が含まれています。

その後、川崎は新たに開発された過給機技術を取り入れ、1933年には最初の過給機付きのエンジンである「べ式七〇〇馬力発動機」（BMW-9）を自社開発しましたが、このエンジンは多くの初期故障を抱えてしまいました。エンジンの信頼性は低下し、そのため短期間での製造が終了することとなりました。

ハ9の性能

1933年にハ9という形式名が導入され、以降のモデルはこの名で呼ばれるようになりました。ハ9エンジンは性能向上を図るも、信頼性に欠ける部分が目立ちました。気化器はダウンドラフト式で、遠心圧縮式過給機と直結されていました。ハ9にはハ9-Iとハ9-IIの2つの主要なモデルがあり、ハ9-IIはさらに甲・乙・丙の3つに分けられました。

主要な性能諸元

• - 形式: 水冷・液冷V型12気筒
• - ボア×ストローク: 160 mm×170 mm
• - 排気量: 42.4 L
• - 圧縮比: 6.5
• - 出力: 850 hp（ハ9-II甲・乙）、900 hp（ハ9-II丙）

それぞれのモデルには異なる特性があり、例えば、ハ9-II甲は「川崎九五式八〇〇馬力発動機」として使用され、ハ9-II乙は「川崎九八式八〇〇馬力発動機」として流用されました。ハ9-II丙は試作エンジンであり具体的な搭載機は不明です。

主要な搭載機

ハ9を搭載した航空機の一部には、以下のような機体があります:

• - ハ9-I: キ5、九二式重爆撃機
• - ハ9-II甲: 九五式戦闘機、キ28
• - ハ9-II乙: キ10、九八式軽爆撃機、五式中戦車

また、ハ9-II乙は中戦車用として550 hpに調整されたものも存在します。また、現物のハ9-II乙は、いくつかの博物館に展示されています。

まとめ

日本の航空エンジン技術は、当時熟成されていなかったためか、ハ9およびその系列のエンジンは高い信頼性を持つには至りませんでした。最高出力は950馬力近辺であり、更なる進化は後のダイムラー・ベンツのエンジンに譲ることとなります。しかし、ハ9シリーズはその革新と改良を繰り返しながら、航空機技術の発展に貢献した重要な存在であったと言えるでしょう。

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