バイター (護衛空母)

護衛空母バイター：大西洋からインドシナまで

本稿では、第二次世界大戦で連合国軍に貢献した護衛空母HMSバイター(HMS Biter, D97)の艦歴について詳細に解説します。アメリカ合衆国で建造されたのち、イギリス、そしてフランス海軍へと渡り、数々の戦場を経験したその生涯は、激動の時代の証言として貴重な記録となっています。

艦形と性能

バイターはアヴェンジャー級護衛空母に属し、元は商船を改造して建造されました。同級艦の中でも、バイターとダッシャーは、右舷側に艦橋を配置するなど、他の艦と異なる特徴を持っていました。改造は貨物船を改造したアーチャーと類似した方法で行われ、船体上に真四角形の飛行甲板が設置されました。この飛行甲板と船体の間には高さ4.88mの格納庫が設けられ、艦尾側の側面は密閉されていました。

全長151mに対し、飛行甲板の長さは当初125mでしたが、イギリス海軍の艦載機運用上の都合から134.7mに延長されました。艦幅は21.2mから飛行甲板では23.2mに拡大しています。元々の商船としての設計が反映され、速度は低速でしたが、飛行甲板上のカタパルト1基により艦載機の射出が可能です。飛行甲板中央には、格納庫から艦載機を運用するためのエレベーターが設置されていました。

兵装

元が商船であったため、バイターの兵装は船体上の空きスペースに分散配置されました。当初は、10.2cm（50口径）速射砲を3基搭載。うち2基は艦首、1基は艦尾に配置されていました。14.97kgの砲弾を14,560mまで到達させる射程を有していました。近接防御火器として、20mm単装機銃15基と12.7mm単装機銃6基を装備し、79型および271型レーダーを搭載していました。

1942年8月には、10.2cm速射砲をイギリス海軍式の10.2cm（45口径）高角砲に換装。この高角砲は14.06kgの砲弾を最大15,020mまで到達させる射程を誇り、対空防御能力の向上に繋がりました。また、一部の20mm単装機銃を連装機銃に換装するなど、兵装の改修も実施されました。

機関

バイターは、ドッグスフォード式2サイクル過給6気筒ディーゼル機関2基を搭載し、1軸推進で8,500馬力を発揮。最高速力は16.5ノットでした。

艦歴

バイターは、1939年にアメリカ合衆国ペンシルベニア州チェスターで起工。1940年12月18日に貨物船「リオ・パラナ」として進水しました。その後アメリカ海軍に購入され、護衛空母に改装されたのち、1940年にイギリス海軍に移管されました。

地中海での航空機輸送任務を経て、イギリスに戻り実戦配備。トーチ作戦に参加し、その後大西洋での船団護衛任務に就きました。この間、Uボートとの戦闘にも遭遇し、イギリス海軍の駆逐艦と連携して数隻のUボートを撃沈する戦果を上げました。また、自艦の戦闘機がドイツ空軍機を撃墜するなど、活躍しました。しかし、ディーゼル機関の故障により修理不能となり、1945年4月にアメリカ海軍に返還されました。

その後、自由フランス海軍に移管され、「ディクスミュード」と改名。機関の修理を経て、艦載機をシーファイアに更新し、再び船団護衛や航空機輸送任務に従事しました。第二次世界大戦後も、一時的に第一次インドシナ戦争にも参加し、1949年には航空輸送艦となりました。1950年にはアメリカ東海岸に赴き、F6Fヘルキャットの輸送任務も担当しました。1956年にトゥーロンで宿泊艦となり、1966年にアメリカ海軍に返還されて廃棄されました。

参考文献

「世界の艦船 増刊第17集　第2次大戦のフランス軍艦」（海人社）
「世界の艦船増刊第71集　イギリス航空母艦史」（海人社）
バレット・ティルマン「第7章　英海軍航空隊」『第二次大戦のワイルドキャットエース』
バレット・ティルマン『第二次大戦のSBDドーントレス部隊と戦歴』
カーユス・ベッカー『呪われた海　ドイツ海軍戦闘記録』
歴史群像編集部編『アメリカの空母』

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