バイト (工具)

バイト：切削加工を支える精密工具

旋盤や平削盤といった工作機械で金属などの素材を切削加工する際に用いられる工具を、一般的に「バイト」と呼びます。この名称は和製英語で、オランダ語やドイツ語の鑿（のみ）を意味する語、あるいは英語の「bit（刃）」や「bite（切り込む）」に由来すると言われています。

バイトの種類と構造

バイトは、刃先とシャンクという主要な二つの部分から構成されます。工作機械はシャンクを保持し、刃先を素材に接触させて切削を行います。構造、つまり刃先とシャンクの結合方法によって、大きく以下の種類に分類できます。

1. スローアウェイバイト

最も一般的なバイトの種類です。刃先とシャンクは別々の部品となっており、ねじなどで機械的に結合されます。刃先は交換可能なインサート（スローアウェイチップ）と呼ばれる成形済みの製品として販売されており、摩耗したら交換することで容易にメンテナンスできます。使い捨てを意味する「Throw away」に由来する名称の通り、経済的で効率的な加工が可能です。インサートの標準的な形状は国際標準化機構（ISO）によって規格化されています。

2. むくバイト（完成バイト）

シャンクと刃先が一体で、同一素材から作られています。刃先は未成形で販売され、購入者がグラインダーなどで自分で成形する必要があります。材料としては、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度鋼（ハイス）などがよく用いられます。「完成バイト」と呼ばれる場合もありますが、これはメーカーによる熱処理が完了しているという意味であって、すぐに使用できるという意味ではありません。

3. ろう付けバイト（付け刃バイト）

鋼材製のシャンクの先端に、超硬合金などの硬い材質の刃先をろう付けしたタイプです。むくバイトと同様に、購入後に刃先を成形して使用します。スローアウェイバイトの普及に伴い、使用頻度は減少しています。

4. 総形バイト

刃先が加工品の最終形状に予め成形されています。回転する素材に押し当てるだけで加工が完了するため、バイトを移動させる必要がなく、大量生産に適しています。

5. ボックスツール

特定の形状の製品を大量生産するために用いられる治工具です。バイトを素材に押し当てて加工を行います。

バイトの用途と材質

バイトは用途によって様々な種類があります。旋盤加工であれば、外径切削、端面切削、内径切削、溝入れ・突っ切り、ねじ切りなど、それぞれ専用のバイトが用いられます。内径加工用の棒状のバイトはボーリングバーと呼ばれます。平削盤用バイトも同様に、加工の種類に応じて様々な形状が用意されています。

バイトの材質は、シャンクと刃先で異なる場合があります。シャンクは鋼材製が多いですが、刃先には高速度鋼（ハイス）、超硬合金、サーメット、セラミックス、cBN焼結体、ダイヤモンド焼結体など、様々な材料が使用されます。これらの材料はそれぞれ硬さ、耐摩耗性、粘りなどに特徴があり、用途に応じて適切な材質を選択する必要があります。例えば、超硬合金は硬さと粘りのバランスに優れ、スローアウェイチップの代表的な材料です。一方、ダイヤモンドは非常に硬いものの、高温では鉄と反応するため、鉄鋼の加工には適しません。近年では、超硬合金やサーメットにコーティングを施すことで、さらに硬度や耐摩耗性を向上させたコーテッド材種も普及しています。

バイトの各部名称

ノーズ (Nose): 刃先部分。刃こぼれを防ぐため、丸みを持たせてあります。
チップブレーカ (Chip Breaker): 切削時に発生する切りくず（チップ）を制御するための構造。インサートの場合、金型で成形される際に同時に形成されます。
* シャンク (Shank): 工作機械にバイトを固定するための部分。サイズ（例：12×12、16×16）で呼ばれることもあります。

切削加工時にはバイトに大きな負荷がかかります。剛性が不足するとビビリ（振動）が発生することがあります。適切なサイズのバイトを使用したり、加工条件を調整することでビビリを防ぐことが重要です。

主要メーカー

バイトを製造する主要メーカーには、タンガロイ、三菱マテリアル、名古屋ダイヤモンド工業、サンドビック、京セラ、住友電工ハードメタルなどがあります。

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